寒い、寒い
真冬の布団からの脱出は一番つらい
次につらいのは、暖房のきかないトイレと洗面所と極寒の廊下
食堂への廊下へ出ると
寒さで背中を丸めた後姿が目に入った
もう何も考えることはない
私は目に留まらぬ速さで奴のジャージの中に手を入れた
「うっ?!」
「たはー、あったかー!」
いきなりの冷たい感覚にビクっと反応して
まったく動かなくなった宗介の背中に頬ずりする
「はあー、極楽ですなあ」
「‥‥俺は地獄だ」
恨めしげにゆっくり首を捻り
私を睨む彼
許して、寒いんだ
「今日は絶対厄日だ」
「ふうー、幸せー」
「‥‥覚えとけよ」
地獄の底から聞こえてくるような低い声で凄む宗介
…相手を間違えたかもしれない