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3年に上がったこの年に大量に女子の入学があり、

神蘭学園の中でも容姿が端麗な寮生たちは
同学年のみならず
他学年の女子からも人気がある



寮生だけでなく、
[ドS教師]
も男子からも女子からも人気があった



2月


本日はバレンタインだ


女子が入学してきた今
冴島に思いを伝えるであろう女子たちの姿を想像すると

なんだかモヤモヤとした気持ちになって
用意しなくていいかな、となんとなく

バレンタインチョコは誰の分も用意していなかった



−放課後


いつものように美術部の友人が部活を終えるまで
冴島部屋で時間を潰そうと思い向かうと


2人の女子が笑顔で準備室から出てきた


「せんせー!私本気だから!」


「この子入学してからずーっと先生の事好きなんだよ!ちゃんと受け止めてね!」


「悪いがガキには興味ねえな。ほれ、さっさと帰れ!」


「ガキじゃないもん!お返し楽しみにしてるからー!じゃあねー」


「返すのは答案用紙ぐれえだな。気ーつけて帰れよ」


微笑で女生徒を見送る冴島に
少しムスッとした顔で
後ろから話しかけるなまえ



「…私もガキなんだけど?」


「おう、みょうじ」


ニヤリと笑いながら短く答える冴島


「まあ、寒いから入れよ」


「…ん、」


硬い表情を崩さず準備室に入るなまえ

冴島は後ろ手でドアを閉め

そのままなまえを抱きしめ耳元でささやく


「…朝から待ってるんだがな」



「なにを」


「なんだ、不機嫌だな」


ククッと笑い優しく離すとなまえを椅子に座るよう促す


わざとドカッと音を立てて座るなまえに笑みをもらしながら自分用のコーヒーとなまえ用の紅茶を用意し始める冴島


しばらく無言になる部屋で
なまえはグルグルと考えていた


自分が嫉妬なんて感情を抱くなんて

面倒に思われたらどうしよう

私が卒業して側に居られなくなって
他の人に気持ちがいってしまったら


私、普通に生きていけるかな…




「…こら、なまえ」



「…あ、」



「…まーた変な事考えてたろ?!ちょっと頭ん中見せてみろ!」


うりゃあー!、となまえの頭をぐしゃぐしゃに混ぜ髪の毛を乱していく冴島に
暗い考えが飛び、少し笑顔になるなまえ


「…もー!容赦ないんだから」


「当たり前だろ?お前が余計なこと考えてっからだ!」


「だって…」


「…動くなよ?」




「…っへ?」


冴島は、なまえをいきなりデスクの上に乗せ体を固定すると
無理やり口をあけさせて何かを放りこむ


「んん?!」



「ほら、噛め」

戸惑いながらも
がり、と噛み砕くと
チョコ特有の甘さが口に広がる


「…ん?、なんで?」



「お前、昨日の晩飯食ってねえって聞いてな
どうせ今日も何も食ってないだろうからな」



「そ、そうじゃなくて!い、いやそうなんだけど!」



「っは、そんなに混乱すんなよ。安心しろ!そのチョコは冴島様作の高級チョコだ」



「…なんかお酒の味がするんだけど?」



「ああ、飲みながら作ったからな、ついでに入れておいた」



「っちょ、私まだ未成年なんだけど!」



「大丈夫だ、なんかあったら俺が責任とってやる」



「い、いやいや!そういう問題じゃ…」



「うるせえ!おら、もう一個食っとけ!」



「まっ、んん!」



冴島はまたもや無理やりチョコを食べさせると
満足そうに笑い、なまえを抱きしめた




「ゆき…」



「くだらねえ事で悩むな。俺はお前から離れねえ。

卒業してからもお前はお前のやりたいようにやれ。
なにかあったら俺がなんとかしてやる。

…分かったな?」



「…ん、ありがと」



「ったく!世話かけさせやがって!
…と、それよりもだな」



「ん?」



「さっきも言ったが俺は朝から待ってやってるんだ。
ちゃんと用意してるんだろうな…?」



「・・・あ。」


「・・・なんだ今の不吉な、あ。は?」


「え、ええっとですね」


「言い訳は聞かねえぞ」


「・・・う」


「お仕置き、だな」


ニヤリと笑いなまえを挟むようにデスクに両腕を置き
逃げられないように固定する


「・・・や、ま、待って由紀」


「覚悟しろよ」



「っや!…っは、




っはは!!」


「おら!あと10分はやめねえぞ!」


「や、やだやだ!あははっ」


心底楽しそうになまえの体を思いっきりくすぐる冴島
わき腹やら脇やら足やらを容赦なくくすぐられ

冴島の腕をつかんだり足をバタバタさせたりと
必死に抵抗するが全て避けられ

とめる術がなく涙を流しながら笑うなまえに
急に動きを止めるとなまえの目の端をぺろりと舐め
真剣な顔して、なまえを正面から見つめる



「他のやつにはやったのか?」


「っはあ!…なにを?」


「決まってんだろ、チョコだよ!チョコ」


「気になる?」



「素直に言わねえと…」

「わあー!言う言う!」


「最初からそうすりゃいいんだよ」


「…あげないよ。
由紀にもあげないのに、あげるはずないじゃん」


「…ふん、当然だな。」


なまえから離れ
フイ、と顔を逸らす冴島に
少し意地悪心が芽生えるなまえ


「あれ?由紀照れた?照れちゃった?」


ねえねえと巻きつくなまえを
口元を隠しながら軽く睨む冴島


「由紀ってたまあに可愛いんだよねー、抱きつきたくなる!」


「もう抱きついてんだろ、ったく」


しょうがないと言ったようになまえの頭を撫でると

ぎゅ、と抱きしめて
耳に小さく音をたてキスをする


「来年は、ちゃんとチョコよこせよ?」


「ふふっ
しょうがないなあ」



甘く笑って冴島の首にキスをして
上から降ってくる唇にもキスをした



少しの煙草の香りと
お酒の味、チョコの甘さが
口内でとけた


あげて後悔やめても後悔

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テーマ「人外ファンタジー」
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