新novel | ナノ


「しつれーしまーす」


準備室のドアをノックして
中からだるそうな返事が聞こえてきてから
ドアを開ける


だるそうなのにちゃんと返事してくれる律儀さに少し笑いながら
足を踏み入れると


こちらに背を向けて頭をガシガシ掻いてる由紀
最大の不幸を背負ったかのような大きいため息を吐いていた



頭から手を離すと教師としてあるまじき髪形だった


「どしたの、寝癖も直さないで」


「んあー?」


心底不機嫌そうにこちらに顔を向けると
こだわりの髭も
(いつもの整えた‥といっていいのか分からないが)

ただの無精ヒゲに成り下っていた



「‥‥ダンディー路線に変更?」


「ちっ、寝坊しちまったんだよ!」


盛大に舌打ちしてイライラと煙草を吸う先生
こうして見ると聖職者には完全に見えない

…そういえば朝のHR、別の先生が来てたなあ


うあー!と乱暴に煙草を消して椅子から立ち上がると
少し怖いニヤリ顔で近寄ってくる


「ちょ、せんせ?怖いんだけど」


「俺はなあ昨日うちの生徒が乱闘騒ぎだなんだって
夜中に呼び出されてロクに寝てないんだよ」

あっという間に捕まり、腕の中へ引き寄せられる
目の下の隈が余計に怖さを感じさせる


「そ、それはお疲れ様」


「お疲れ様で済んだら睡眠時間なんていらねえんだよ!」


オラ!くらえ!
と私の頬に顎を擦り付ける先生

‥ちょっと、マジで痛い


「や、やつあたりですか、先生!」

なんとか逃れようとするけど
がっちりと体を固定されてぜんぜん動けない


「八当たりでもしねえとやってられねえー!」


うらうらと反対側の頬もずりずりと擦られる
痛いけど、
八当たりしてくれる相手になれてることがちょっと嬉しく感じる私は
もう末期なのか


しょうがないから寝癖も直るように頭を撫でてあげるよ、せんせ

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