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昼食を終えた昼休み、私は相変わらず化学準備室にいた。

由紀もいつもと同じように鼻歌なんか歌いながら昼休みを満喫している。

ただし、いつもと違う事が。


「お前、髪サラサラ過ぎて結びにくいな」


「そうかな?…ていうか何してんですか」


「ポニーテールの気分だからな、直々に結んでやってんだろ。」


「はあ、そうですか」


由紀は机に浅く座りながら私の髪をいじっている。
私は由紀の足の間にいて、身動きが取れない。

由紀の少し冷たい手が触れて気持ちいい。


「おい、立ったまま寝るなよ。器用なやつだな」


「だって、気持ちよくて」


「夜だけじゃ満足しないで昼も気持ちよくなるなんてとんだ変態だな」


「いやいや!そういう意味じゃなくて「出来たぞ」


気付けばポニーテールの出来上がり。どこからゴムを持ってきたのかわかんないけど。

由紀は満足そうに頷くと
「おい、一回こっち振り向いてみろ」
と。
言葉のまま振り向くと
パサ、と由紀の顔に髪があたった。

「…やっぱりコレがいいよな」うんうんと二回頷く由紀。

「どんなフェチですか先生」

「あ?男のロマンだよ、ロマン。
お前にゃまだ早えーか」

言いながら私を足の間から追い出すと、

ほれ、授業の準備手伝え。
と、プリントの山を渡してきた。



−5時間目



チャイムが鳴り、授業が始まる。
「おっなまえ
ポニーじゃん!似合うな」


「あ、ホントだ。
なになに、心境の変化?」


「んー、まあね」


話しかけてきた佑と晃を軽くかわす。
・・・自分でやったわけじゃないから少し落ち着かないかも。



「おい、3班プリント取りに来い。ついでに黒板消してけ」


「あ、はーい」


あ、今日日直なのに黒板消すの忘れてた…。
上の方届かない…

って


「いたっ」


「おいみょうじ、上の方もちゃんと消せよ?」


「背伸びしても届かないんです…。
ってか髪引っ張って呼ばないでください!」


「なんだ引っ張って呼ぶための髪型じゃねえのか」


「ち、違います!…たぶん」


「ククッ、たぶんってなんだよ」


楽しそうにポニーテールを引っ張る由紀


うう、みんないるのに



「おい由紀!堂々とイチャついてんじゃねえ!」


「そーだそーだ!オレだって髪触ったことないんだぞ!」


「そうだよ!俺も肩抱いた事しかないんだから!」


「アホか!十分だろ!」


と、騒ぎだすみんな。
あーあ、余計嬉しそうだよ、この教師。


「おーおー、もっと悔しがってみろ!」


はっはっはと高笑いする由紀。
ギリギリと歯軋りがあちこちから聞こえる。


…ハンカチくわえるなんて、さすがだね榊くん。


「よし!気分よくなったところで小テスト始めるぞ!」


「「えーー!!!」」


この日は放課後まで機嫌がよかった冴島先生でした。

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テーマ「人外ファンタジー」
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