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遅くなるから寝てろと言われたのは今朝

学校から冴島家に帰宅して、ご飯食べてお風呂入って…

いつも通りに過ごすものの
冴島家に泊まるようになって初めて体験する一人の夜

由紀がいない違和感と寂しさを感じる


暗くなってきた思考をとめるべく、
由紀のベッドにもぐりこみ友達に電話をかける


「そうそう、それでさ」


盛り上がる会話に寂しさが薄れ
一人の時間を満喫しはじめた矢先、玄関からガタガタっと大きな音がする

電話の向こうの友達に絶対電話切らないで!とお願いしてから
何事かとおそるおそる部屋から顔を出してみると


音の主は靴を乱暴に脱ぎ捨てている由紀だった


ほっと一息ついて、友達に一言謝り
用事が出来たからと電話を切る


「おかえり、早かったね?」


時計を見るとまだ8時
早くても10時頃だろうと予測していたのに


「お前、なんで電話なんかしてたんだよ」


イライラとした様子で洗面所に向かう由紀
上着を私の方にポイと投げ

腕時計を定位置に置きガラガラとうがいを始める


「だって、することなくて」


上着をかけつつ返事をする
うがいを終えた由紀は手を洗いながら首を回している


「こっちはお前が気になって帰ってきてやったってのに」


「え?」


水の音でよく聞こえず聞き返すと
由紀は、手を拭きこちらにくると近くのソファにどかりと座り手招きする


素直にソファまで行くと手を引かれ由紀の上に座るような格好になる


「お前が一人寂しく泣いてると思うと楽しく酒なんか飲めねえって言ったんだよ」


未だ眉間に皺を寄せている由紀に少し怖くなる


「な、泣いてないし!
私は一人でも平気だよ?」


と、返すと


「俺が平気じゃないんだよ」


と私の額に自分の額をくっつける
どき、と跳ねる鼓動を奥のほうへ押しやって由紀から距離をとる



「そ、そんなに私、弱くないよ」



「そうだな、楽しく電話してたもんな」


切ない顔からまた仏頂面に変わる由紀に慌てる


「そ、それは紛らわすために電話を!」



「あ?なにを紛らわしたんだよ」


途端にニヤリと顔を歪ませ、私の体を固定する
しまったと焦るとより嬉しそうに顔を歪ませる

こうなったら蛇よりしつこい由紀に
もう降参、と観念する


「はいはい、一人が寂しかったのはわたしですー
寂しいのをごまかそうと電話をしてたのもわたしですー」


「なんだ、開き直ったな」


くくっと笑う由紀に少しむっとする



「…悪い?」


「いや、嬉しいよ」



急に優しく笑う由紀に顔が熱くなるのを感じた



「な、ななな」


「くっ、おもしれー顔」


「う、うう」


くくっと笑い続ける由紀にチョップをかますと
その手を軽く受け止め体ごと引き寄せられる


「可愛い可愛いなまえちゃんのために早く帰ってきて正解だったな」



「別に、早く帰ってきてなんていってないし!」
どうしようもなく恥ずかしくて強がる私に笑う由紀


「仕方ねえから今日は一緒に寝てやるか」


「・・・とか言いながら毎日抱き枕にしてるくせに」


「・・・二次会いってくるかな」


「や、やだ!」


「お前、可愛いな」


「うるさい!」


「ついでに風呂一緒に入るか」


「もう寝るっ!」


「ベッドの右側は開けとけよー」


「自分の布団で寝ます!」


「あ、俺の下着出しといてくれ」


「自分で出してください!」


「愛してるぞー」


「!!」



静かだった冴島家は
いつも通り騒がしい冴島家に戻ったのでした

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