新novel | ナノ
体育教師の思いつきにより本日の授業内容はドッジボールとなった
まさか高校生にもなってドッジボールをやるとは誰も予想してないであろう展開に男子は色めき立ち、女子はテンションだだ下がり

男女別でドッジボールをやるのならまだ良い
混合なのだ、そりゃ男子のボールは怖い
女子からは「えー、怖いし」やら「男子盾にすれば良くない?」などと言った会話が男子に聞こえないように行われていた

男子は男子で「女子と一緒とかやりづらくね?」「でもラッキースケベありそうじゃん?」といった会話が漏れ聞こえる
いや、ラッキースケベて

そんなこんなでドッジボールが始まり、組み分けはグッパーでされ、私は宗介と同じチームになった
ちなみに凛は敵チームである

「おう、頑張ろうぜ」
「よろしくね盾さん」
「…おい」
呆れたように眉毛をさげた宗介は危ねえから後ろには居るなよ、と後ろにくっついた私を引き剥がしてしまった
宗介と一緒なら怖くないかもと思ったのに、おっきい背中から離されたら不安になるじゃんか、もう

じゃんけんにより敵チームの先攻で試合が始まった
ボールを持った凛はTシャツの袖を肩までめくってやる気満々だ

「宗介!覚悟しろよ!」
「望むところだ」

親友2人の間で交わされる火花
凛は持っているボールを外野に回し、私たちを翻弄する

外野に根回ししておいたのか、狙われるのは宗介ばかり
剛速球で飛んでくるボールを交わしまくる宗介
おっきい体してるくせにほいほいボールを避けている

当たらないマトに焦れて凛が投げたボールがブレる
投げ損ねたボールが私の方へ向かってくる
私の近くにいた人達はキャーキャーと声をあげ逃げ惑う
私は少し遅れてしまい、ボールを避け切れそうにない

「…っ!」
「っと、」

あれ、痛く…ない?
凛から放たれたボールは私に当たることなく、ばしんと大きい音を立てて私の前の人影で止まった

「…よそ見してんなよ」
私の方を少し振り向いてそう声をかける長身の男

「わりいなまえ!」
手が滑ったと謝罪する凛に、既のところでボールを受け止めた宗介が凄む

「おう凛、こっからはこっちの番だぜ」
にやりと笑う横顔が見え、私はほっと息をつく

「宗介、ありがと」
「…危ねえから下がってろ」

またも足手まとい的発言に少しカチンとくる、けど
あれだけ凛に負けたくないオーラを出してた宗介が身を呈して私を守ってくれたことに何も言えなくなる

その後外野に回しに回して敵チームをなぎ倒していく宗介と外野のみんな

そんな状況に凛は焦る様子も見せず楽しそうに避け続けている
ボールはついに敵チームに回ってしまい味方は散々に倒され、味方外野が中に入ったにも関わらずついには私と宗介の2人になってしまった

「宗介、なまえ、あとはお前らだけだぜ…」
「…こいよ」
目の奥を光らせ狙いを定める凛に真剣な表情で笑いかえす宗介

凛は外野にボールを回す
どのタイミングでこちらを狙ってくるか分からなくてただひたすら逃げ惑う
宗介は笑いながらボールを目で追い敵の出方を伺っている

ついに凛がこちらにボールを投げてくる
前に出てしまっていた私はボールを受け止めようと体制を整える
そんな私の後ろにいた宗介が駆け寄り、ボールを取ろうと手を伸ばす

ボールは私の左肩に当たり、斜め後ろに飛んでいく
あ、と思った瞬間にはもう遅かった

肩に当たり勢いを落としたボールは宗介の左手に当たり、落ちた

…あ、と私と宗介はほぼ同時に声を出して、試合は終了した

凛チームの喜ぶ声と共にピーッと笛がなった



「お前、凛がミスったときボーッとしてただろ」
「え、してないもん」

昼食後自販機の前でコーラを飲んでいた私に宗介はそう声を掛けてきた
私の手の中にあるコーラを当たり前のように奪い飲む、無言が続く

なんとなく宗介を横目で見上げるとごくごくと上下させる喉仏が見えた

「なに考えてたんだよ」
「…凛やる気あるなって」
「他には」
「ボール怖いなって」
「それだけじゃねーだろ」

私を見下ろす表情は意地悪で、私は目を背けた
ふい、と視線を外され面白くない宗介はコーラを私の頬に当て白状させようとする
…宗介に気付かれてるの、気付いてるんだ本当は

「俺の言いたいこと分かってるんだろ」
「…だって、しょうがないじゃん」

小学生の頃からそうだった
楽しそうにボールを避けてる姿、すごく好きだった
遠くから見ていたくなるんだ

「俺のこと見てて逃げるの遅れたんだろ」
前もあったもんな、と続け、笑う

でも私だって気付いてるよ

「宗介だって、私が狙われそうになるとボール取りに行ってたじゃん」
「味方だからな」
「…他の子にはしないくせに」

小学生の頃から、そうだった
気付いていた

「…味方だからな」

そう繰り返すと、私の頭にキスを落として飲みかけのコーラをついでに頭に乗せ教室に戻ってしまった
飲みきれないコーラを手に取り、あの頃とは違うおっきい背中を追いかけた

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