おぎゃあ、おぎゃあ、と、赤ん坊の泣き声が聞こえる。周りの母さんや、みんなニコニコとしていて、みんながみんな「おめでとう」と口にしていた。


お向かいの高尾さんのところに赤ちゃんが生まれたのよ?


そう言われ、手を引かれて向かったのは向かいの家の高尾さんのお家だった。明るくて良くしゃべる高尾さんのお母さんは、いつも俺が会う度に頭を優しく撫でてくれた人だ。その高尾さんのお母さんが今日、本当にお母さんになったらしい。ガラリと高尾さんの家のドアを開けて「おじゃましまあす」と母さんがのんびりとした声で言った。それのならいおれもおじゃましますと言うと、長い廊下の奥から「おぎゃあ、おぎゃあ」という泣き声がした。母に手を引かれるがままつれられる。泣き声がどんどんと大きくなって、進んだ先の障子を開けると、高尾さんのお父さんとお母さん、それから高尾さんのお母さんに抱きかかえられた、小さな赤ん坊がいた。

「本当におめでとう、おめでとう。可愛いわねえ」
「うふふ、ありがとう」

立っている俺たちに合わせて高尾さんのお母さんとお父さんも立ち上がったので、おれの方からは赤ん坊も見えなくなってしまった。少し上にある高尾さんのお母さんの腕からは相変わらずおぎゃあおぎゃあと泣き声がして、そちらをじっと見つめた。

「ふふ、真ちゃんも気になる?」

それに母さんが気付いたのか、こえをかけてくると、高尾さんのお母さんも俺に合わせてしゃがんでくれた。そうして腕の中で泣いている赤ん坊を差し出してくる。

「真ちゃん、この子は和成って言うのよ。ほうら和成、お向かいのお兄さんの、みどりましんたろう君よー。真ちゃん、和成だっこしてくれる?」

そう言われてこくりとうなずいた俺の腕に、高尾さんのおかあさんが「かずなり」を乗せてきた。意外と重くてびっくりして、それから首がかくんと後ろに落ちたので慌ててそこに腕を回した。「じょうずねえ」と感心する高尾さんのお母さん。俺は「かずなり」の顔をのぞき込んだ。堅く目を瞑っておぎゃあおぎゃあと泣いていた「かずなり」だけど、ふと目を開けてこっちを見つめる。


あ、笑った


くしゃりと顔を歪ませキャッキャとはしゃぐ「かずなり」。高尾さんのお母さんも母さんも「真ちゃんの事が好きみたいねえ」と言っていた。きゃっきゃと笑っている理由は分からないし、意外と重いし、でも「好きみたい」というのに悪い気はしなかった。


「かずなりー、ほら、しんちゃんですよー。和成のお兄さんですよー。なかよくしてもらいなさーい」


高尾さんのお母さんがそういって笑った


腕の中の「かずなり」は、とてもあったかかった。




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