「っあーいい汗かいたー!!」

バタンと体育館の床に倒れた高尾は確かにすさまじい量の汗をかいている。ヒーヒーと言っている高尾のその情けない顔にタオルを放ってやれば、そのタオルの下からサンキューとくぐもった声が聞こえた。時計を見ればもう七時半を示していて、もうこの学校に残っているのは俺たちだけだろう。

「高尾、少し休んでから切り上げるぞ。」
「りょうかーい。」

体育館の椅子に座れば高尾も「よっこいせ」と爺くさい呟きと共に俺の隣に腰を下ろした。先ほどまでスパイクが床に擦れる音が、ボールが床を着く音が聞こえていたのに、今はもう俺たちの声が良く響く程に静かだ。暑い夏が台風と共に通り過ぎて、ようやく秋の涼しい風が吹き始めたので夏の夜の様な蒸し暑さは消え、今はあの蝉の騒がしい声では無くて小さく鈴虫の鳴き声がする。秋だねえ、と妙に感傷深く言った高尾は、突然俺の方を向いた。

「あ、そういや真ちゃん、俺手相出来るんだ」
「は?」

あまりに唐突な話題にいぶかしげな声を上げる。と、高尾はそんな俺に構わず「はい右手出してー」と呑気な声を掛けてきた。

「何を急に」
「まあまあ、ほら、真ちゃんその手のモノ好きだろー?まあ騙されたと思ってさ」

多分高尾はおは朝占いのことを言っているんだろう。確かにアレは俺の人生を左右する程の威力だが、それとこれとは話が別だ。が、高尾が俺の許可無く右手を持ち上げたので諦めた。高尾は俺の掌をしげしげと見つめている。たまに掌を意味ありげに(実際あるのであろうが)指でなぞるのでくすぐったい。

「…ところでお前、俺の何を見ているんだ?」
「んー?」

しかしそれに高尾は明確な答えは出さず「今に分かるって」と言うだけで俺の手から目を離さない。しばらくじっと俺の手を見つめた後に最後に目を閉じて、此方に顔を向けた。

「はい、見えました!!」


そうどこか胡散臭く言った高尾に「だから何がだ」と言えば、高尾はふふんと自慢げに笑うと口を開いた。

「緑間信太郎の、運命の相手」
「………は?」

発せられた単語が理解できずに思わずまた間抜けな声を出すと、高尾は吹き出してから俺の目を見つめてきた。

「えーっと、まず黒髪でー、明るくて真ちゃんのこともよく分かってて、」

ぐっと、右手を持つ高尾の手に力がこもった。

「凄く献身的で、真ちゃんのことリアカーで楽々運べちゃって」

その辺りで、高尾の言いたい事がわかってしまい、顔が熱くなった

「で、ホークアイなんての持ってって、バスケが、まぁ真ちゃんに負けず劣らず出来ちゃう目の前に居るスーパーイケメンだよ、真ちゃん」

そう、からかうように口角を上げられて、腹が立った。でも、本当に嫌な訳では無いことくらい自分が一番良く分かっていて。

「・・・そんな奴は俺の目の前には居ないのだよ」
「はは、言ってくれんじゃん!!・・・な、真ちゃん」

握られた右手にまた手を重ねられて、柔らかく微笑まれた。

「好きだよ、すっげぇ、大好き。」

そんな風に言われたら、「俺もだ」と返さずにはいられないだろうが


貴方の運命
当たっているから、質が悪い。







恥ずかしい奴等め。




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