「・・・遅い。2分遅刻だ。」
「ごめんね真ちゃん!!何か奢るからさ、許して!!」

そう言えば真ちゃんはそっぽを向いて「行くぞ」とだけ言ったので俺は笑いながら真ちゃんについていった。
今日は12月25日。クリスマスだ。俺の家も真ちゃんの家も家族でのお祝いは24日なので、今日は二人で過ごしたいと言えば真ちゃんは少し赤くなりながら許可をくれた。なんとも不思議な展開で恋人になれた俺達の、所謂初クリスマスデートだ。(元々恋人になれてもなれなくても、俺の中で今日は一緒に過ごす予定だったが。)今日は一母さんから約束の20000円を貰っておいた。だから金には余裕があるんだ。今日のデートをちょっとリッチであわよくばエッチにするためにな!!
そんな下らない邪な考えを持ちながら「真ちゃん」と声をかけて左手を出す。すると意味が通じたのか、少し戸惑ったあと、真ちゃんはおずおずと俺の左手に右手を重ねてくれた。多分暗いから許してくれた行為だ。ニヤニヤと笑っていると真ちゃんは空いてる左手で俺の頭を叩いてきた。
今日は5時に待ち合わせて一時間ほどイルミネーションの綺麗な街でイルミネーションを見たり、買い物をして夜ご飯を食べて帰る。帰りは9時程になるとお互い両親には伝えてある。来てみればをもうイルミネーションは灯っていて、周りはカップルや親子で溢れていた。男二人、それも約180、190の男は目立つんじゃないかと思ったが、親子はそうでもなくらカップルは自分達の世界に入りっぱなしだ。俺たちもカップルだけど。

「・・・綺麗だな。」
「うん。ずっげー。」

こっそりと手を繋ぎながら緩やかな人混みに紛れる。繋いだ左手は温かかった。

「む、もう6時か。そろそろ何か食べるか?」

イルミネーションを見て、少し買い物をして、いつの間にか一時間が経過していた。真ちゃんは親切で俺に何か食べるかと提案してくれているが、俺はこの時を待ちわびていたんだ。

「うん、じゃあさ、俺、行きたい所あるんだけど」

そう言えば、分かったと言って着いてきた真ちゃんだが、進むにつれ変わりだす町並みにだんだんと違和感を覚えたのが、歩き出して5分。そして目的地に到着した頃にはもうここが何処だか分かったらしく、真ちゃんはわなわなと震え出した。

「わーん待って待って!!」

予想通りの反応に、俺は何か言われる前に泣きながらストップをかけた。追いすがられた真ちゃんはそっぽを向いたままだ。
そう、俺たちが来た場所は、世間一般で言う、ラブホテルだ。

「確かに、俺らにはまだ早いかもしれないよ!!まだ付き合って間もないし、けど、ずっと俺我慢してて、ようやく真ちゃんと恋人になれたから、まああわよくばって感じだったから、その、変なことはしないからさ、二人でゆっくりご飯たべたりしたいんだ。」

そう情けなく言い訳を並べながら真ちゃんの顔をうかがえば、そこには刺すような冷たい視線、ではなく、うっすらと朱を帯びた顔で。

「・・・え?」

俺が何か言う前に真ちゃんはずかずかと中に入っていく。そうしてフロントにある空いてる部屋のパネルを適当に押して、フロントにおいてあった鍵を受け取って、あっというまにエレベーターに乗って部屋に入ってしまった。

「え!?や、真ちゃん、いいんだよ別に!?嫌だったら他の所行くし」
「・・・別に嫌だとはいっていない」

そう小さく呟いた真ちゃんを勢いよく見れば、その顔は先程よりも赤くて。

「・・・黄瀬が!!」
「ん、ん?」
「黄瀬が、こうやれば喜ぶと言っていたから、その」
「・・・んん?」

ベッドに座る真ちゃんの隣に腰をかけて、話の展開がよく読めなくて首をかしげると、今までうつむいていた真ちゃんが顔をあげた。

「俺は、お前の欲しい物なんか分からなかった。」
「うん」
「だから、その、」

す、好きにしろ

語尾がどんどん小さくなっているので最後の方はもうほとんど分からなかったが、内容は通じてしまった。

「!?ど、どうした」

突然膝に額をすり付け、ちょうど『考える人』のポーズになった俺に、真ちゃんは不安げに声をかけてきたが、今の俺は正直いっぱいいっぱいです。はい。

「・・・真ちゃん」
「・・・なんだ。」
「・・・言ってる意味、分かってる?」

そう聞けば「・・・ああ。」と小さく返ってきて、たまらず抱き締めた。

「いいの?」
「お前は聞いてばかりだな。良いと、いってるだろうが。」

そう言った真ちゃんが、俺に軽い、本当に軽い羽が触れるようなキスをしてきてくれたので、俺は容赦なくがっついたキスをしてやった。




「・・・あ、そういえば。」

ベッドで横になる真ちゃんの体(主に腰)を暖かいタオルで温めていたら、ふと鞄にはいっている物の存在を思い出した。歩けない真ちゃんに待つよう声をかけてから鞄をあさって、ひとつの箱を取り出した。

「はいこれ、俺からのクリスマスプレゼント。」

そう言って真ちゃんに開けるよう促せば、起き上がった真ちゃんは箱にかかっているリボンを解いて、中身を明るみに晒す。そこに鎮座しているのは、シンプルなシルバーのネックレスだ。今日、隙をうかがって真ちゃんに買ったのだ。

「真ちゃん、後ろ向いて?」

素直に後ろを向く真ちゃんの首に、そのシルバーのネックレスを通す。俺の思った通りやはりそれは似合っていて、俺は満足げに笑った。

「真ちゃんは俺のっていう証。」

そう口に出すと、なんだか俺と真ちゃんを繋ぐ首輪みたいだと思ったが、流石にそれは言わないでおいた。すると真ちゃんは首元のそれに触れてから、どこか少し満足そうに笑った。

「こんなことをしなくても、俺はもう逃げないのだよ」

その一言は俺に多大なるダメージを与え。
俺は真ちゃんをもう一度押し倒してキスを落とした。

(ありがとう真ちゃん)
(大好きだよ)






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