「やあ」
瞼を開けば、また彼はそこにいた。
「あー…そっちか。」
「ん?なんだい?」
「んにゃ。こっちの話。」
またこのサンタさんが俺の夢に出てきたということは、やはり今日のあれらはすべて仮プレゼントの力だったのだろう。やっぱ俺の才能が開花したわけじゃねーのか。ちょっと残念に思いながら曖昧に笑うと、サンタさんはそれを気にしないようにまた口角を少し上げる。
「で、どうだった?プレゼント。」
「いやもうサイコーっすわ。」
授業で何当てられても即答できるし、ゲームメイクもいつもより楽しかったし。そういえばサンタさんは「そうかい?良かった。」といってその橙を綻ばせた。相変わらず空は灰色で塗りつぶされていて、周りにはおもちゃがゴロゴロと転がっていた。変わったことといえば、そのおもちゃの量が増えているところだろうか。するとサンタさんは「さて」と言って俺のほうをまたじいっとみつめてくる。
「信憑性も出てきたことだし、プレゼントは決まったのかな?」
そういわれて、そうだったと思い出した。プレゼントを決めなければいけないんだった。
しかし、そこでふと思う。実際仮であるが頭がよくなりたいといった俺にこの小さなサンタは知能をくれた。普通ではありえない、でもそれを成し遂げてしまったことにより、このサンタさんは本当に願えばなんでもしてくれるということがわかってしまった。と、いうことは、俺が特定の人物を殺してくれという願いもかなってしまうのか?
ぞっとした。俺の一言で人の命も、大げさに言えば地球の未来がかかっているのか――と、ここまで考えて、自分アホさに笑ってしまった。
(馬鹿か俺は。それを望んでいるわけじゃねーんだし、もっと気楽に考えよーぜ)
うーんと顎に手を当て考えるしぐさをすれども、動作とは裏腹に全く考えがまとまらない。ちなみに願いを増やすとか、そういうのはだめらしい。よくばりはだめってことか。
俺は申し訳なく思いながらサンタさんにもう少し待ってもらえないかといった。
「うん、いいよ。ただし12月23日の夜までに考えておいてね」
そういってサンタさんはまた意味深に笑って俺に手を振った。
「じゃあね和成君。また明日。」
ピピピピ、ピピピピ。
俺の耳元でやかましく騒ぐ目覚ましを頭のボタンを押すことで黙らせる。大きく伸びをした俺はカバンの中から一枚のプリントを取り出した。昨日の社会の小テストだ。丸しかないそのテストの問題のみを見つめる。
問一。1017年に摂政となったのはだれか。問二。問一が立てた建築物は?
うん、わからん。