「…夢か。」

次に瞼をあげて見えたのは、幾多の星でも、赤いカーディガンのサンタさんでもなく見慣れた白い天井で、思わずため息をついた。サンタさんなんてもう小学校3年生で卒業したんだけどな。まああの話が本当だったら問題だけど。そう心の中でいいながら腕を伸ばして時計を見れば長針は9、単身は8よりの7を指していて…

「っおおおおおおおう!?」

立派な寝坊だった。



そのあとはなかなか散々だった。いつもより五分ほど遅れて真ちゃん家に到着した俺はやっぱりじゃんけんに負けて自転車をこぐ羽目になった。「今日は12位だったのだが、ラッキーアイテムが運を補正してくれたのだよ」と、後ろの席で言った真ちゃんの右手にはかの有名なツタンカーメンが。(なんでそんなもんまで持ってんだよ!!模型だろうけど!!)その後は朝練に遅れそうになった俺たちに完全に目が切れてる宮地さんが「よおし緑間高尾、外周50」とか笑顔で言ってきたのでそれを回避したり、めまぐるしい朝だった。
だから、授業が始まったころにはもう昨日の夢のことなんてすっかり忘れていたんだ。






(あー…眠い)

朝から色々とあったせいか、一時間目の授業から本格的な眠気が襲ってきた。眠い、そう呟けば後ろの真ちゃんが容赦なく椅子をけってきて強制的に起こされる。ガタンと音がして周囲がこちらを見てきたので笑いながら「真ちゃんいてーよ」といえばまた椅子をけられた。一時間目は俺の嫌いな日本史で、眠気も相まってどうしても内容が頭に入ってこない。集中できねーなあってノートだけ適当に取っていると突然先生が「じゃあ前の所テストするぞー」って…は!?

「えっ!!聞いてねーよせんせえ!!」
「当たり前だ高尾お。抜き打ちだからなあ。」
「抜き打ちとか先生卑怯だって!!」

俺がそう抗議すれば周りも「そうだよお」と嘆きの声を漏らす。俺は日本史が嫌いだ。あんまり授業の復習をしない俺が、まさか嫌いな教科の復習をするわけがない。昨日の内容なんて覚えてるわけねーだろ。半分諦めながら先生の合図とともにテスト用紙をひっくり返せば案の定そこには全くわからない問題が…

(…あれ?)

問一。1017年に摂政となったのはだれか。問二。問一が立てた建築物は?
わかる。藤原頼通と平等院鳳凰堂だ。
そんな馬鹿な。おれは愕然とした。昨日の内容なんて全く覚えてないのに。慌ててほかの問題に目を走らせる。797に征夷大将軍になったのは?武士で最初に太政大臣になったのは?答えは坂之上田村麻呂と平清盛だ。おかしい。あんなに嫌いな日本史がここまでわかる。止まることを知らないシャーペンを握る手は、おれの解答用紙を次々と埋めていった。そんな馬鹿な。そうして三分と経たないうちにあっという間に回答欄が埋まってしまった。シャーペンを置きながら俺はまじまじと回答を見つめる。俺が日本史の小テストをここまで埋められるなんて、奇跡だ。ピピピピ、とアラームが鳴って、先生の「隣と交換して採点しろー」という声とともに周りが交換を始める。俺も隣の女子(名前を山中という)と交換をして配られた模範解答を見ながら採点をする。すると俺の採点が終わったらしい山中が「ちょっと高尾ー」とどこか不満げな声を投げかけてきた。

「あんなに一番文句言ってたわりに何よこれ!!嫌味!?あんた日本史嫌いとか言ってなかった!?なんで!?」
「わりーわりー、ま、これが俺の実力ってことで!!」

「ふざけんなよ!!」と笑いながら渡された答案用紙を見ればやはり満点で。俺は笑いながらも内心は戸惑いまくっていた。なんで?こっちが聞きたい。後ろの真ちゃんに「見て見て真ちゃん俺満点!!」と言って答案用紙を見せればちょっと驚いたような顔をしてからメガネのブリッジを中指で押し上げる。それはお前が人事を尽くした結果なのだよって言われて、貴重なデレをいただきながらも、若干申し訳なく思っていた。なぜなら俺は人事を尽くして満点を取ったわけじゃないからだ。
それにしてもいったいどうして。ちらりと自分の答案用紙を見やって、ない頭を振り絞った…ところで、思い出したのは昨日のオレンジの瞳。

(…まさか。)




それからはもう、なんというかやりたい放題だった。数学の時間の黒板の問題は全部わかるし、突然あてられた英文の翻訳も、本文を見ただけで翻訳機能のように日本語訳がすらすらと出てくる。いつもはわからないときは真ちゃんに教えてもらうんだけど、今日ばかりは真ちゃんの力なくともなんでもできた。(まあ俺の力でもないんだけど。)そしてこのよくできたノウミソはどうやら勉強だけでなくバスケにも使えたりしっちゃっているのだ。ゲームメイクが小学校の算数に思える。どこにパスを出せば真ちゃんが決めやすいか、どこを攻めればいいか。それらが頭の中に一斉に入ってくるから、まあ気持ちのいいものではないが、いつもよりバスケが簡単で、変わった面白さがあった。監督にも褒められて、宮地さんにもどやされて、真ちゃんにもデレをいただけた。

(サンタ様様だなまじ)

まあまだ仮定だけど。

(今日また夢に出てくれば正真正銘あいつの力だ。まあ出てこなかったら単に俺の才能が開花しただけだけど。)

前者もいいけど後者だったらサイコーだなあ。なんてな。





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