※長い
※ちょっとお下品
※ふぁんたしー(エロ)
※アホ




"真ちゃん明日お弁当持ってこなくて良いからね!!(`∀´*)"


と言うメールが緑間の元に来たのは夜の9時頃の事だった。
とても男子高校生とは思えない本文を画面越しに見つめながら、緑間は、奴は一体何を考えているんだ、と怪しんでしまう。夜になって突然こんなことを言われたら、普通の人間ならば単に自分の分の弁当も作ってきてくれるのだろうと悟るであろう。が、しかし緑間と言う男は素直にその思考にたどり着くことが出来ない男だ。何か企んでいるのでは無いかと考えてしまう。まさか午前中だけ出て学校をサボろうと考えているのでは、と思ったが、高尾は軽薄な口調だったり少々お調子者なだったりで所謂チャラい部分があるものの、基本的には真面目だ。学校をサボるなんて言うとは思えないし、何より優等生を形にした緑間にそんなことを言った所で、まさか「はい良いですよ」と了承が貰えるとは思っていないはずだ。と、しばらく考えた緑間の、もう画面が暗くなってしまった手の中の携帯が震え始める。それは高尾からの二通目のメールで、開けば緑間はひくりと口角をひくつかせた。

"そんなに深く考えたって、別に何も考えてねーよ!!
もうおばさんにも言っちまったから、決定なー!!"

(お前は何時から俺の母親とアドレス交換までする仲になったんだ!!)

本文の最後に「愛してんぜ真ちゃん」と余計な事が書いてあるメールを見て、緑間の腕は怒りによりわなわなと震えるも、耳が赤いので本気で怒っていないことは誰の目から見ても明白である。緑間はそのメールに「死ね」とだけ返してから、理由を聞くのを忘れたことに気がついたが、その後高尾からのメールは途絶えてしまったので、仕方なく諦めたのだった。





「しーんちゃん!!屋上行こうぜ!!」

高尾からのメールが届いた、次の日。4限目の鐘が鳴り、号令がかかったと同時に高尾は弁当箱を取りだし緑間の方を振り替える。手に持っている弁当箱は2つ。本当に作ってきたのかと驚くも、やはり何かを、とまた考えた緑間だが、考えた所で今日緑間は弁当を持ってきていない。結局はこれを食べなければならないのだと諦めた緑間は、何故屋上に行くかはわからないが、今日は天気も良いし若干暑かった教室から出て外の空気を吸いたい、そう思った緑間は「ならばさっさと行くぞ」と、今日のラッキーアイテムのくまのぬいぐるみを忘れずに持って教室を出た。



屋上へ出ると冷たい風がサッと通り抜けた。が、太陽が出ているため緑間達を温かく包み込む。教室が暑かったせいか、どちらかと言うと心地よい方なのだ。高尾は貯水タンクの近くに腰を下ろすと、弁当箱を開いた。

「じゃーん!!和成君特性サンドイッチでーす!!」

弁当箱の中に鎮座していたのは幾つものサンドイッチだった。どうやら具は一つだけで無いらしく、数種類ものサンドイッチがある。

「これがハムな、で、こっちが卵で、これがカツサンド」

さながら弁当を作ってきた彼女のようにサンドイッチの中身を紹介する高尾に、緑間は「・・・自分で作ったのか。」と聞いた。緑間はあまり料理は得意ではない。というか言ってしまえば下手くそだ。なので高尾の料理の凝り具合に感心していると「まーねー」という返信と共に、ラップの剥がされたサンドイッチが緑間に差し出された。見れば中身はカツだった。食べろ、と言う意味を汲み取った緑間はそのサンドイッチを一口頬張る。

「・・・うまいのだよ」
「まじ!?よっしゃ!!」

と、緑間が素直な感想を零すと高尾はガッツポーズを決めて喜んだ。機嫌良く自分も食べ始めた高尾を横目に次のサンドイッチにも手を伸ばす。次に開いたのは卵で、これも素朴ながら美味しいと緑間は高尾にまた感心した。基本的に高尾は何でも出来る奴だと知ってはいたのだが、料理を食べるのは初めてだったのだ。タマゴサンドもあっという間に平らげた緑間は、さて次は何を食べようかと弁当箱の中身に目線を走らせたところで、ふと紹介されていない具材が有る事に気がついた。

「高尾」
「んー?なあに真ちゃん」
「これは何なのだよ。」

緑間が掲げたサンドイッチの中身には白い物が挟まれているだけである。トロリとしたその中身は一体何なのだろうと緑間がしげしげと見つめていると、高尾は「あー」と言ってにこりと笑って、一言。

「それな、俺のセーエキ」

瞬間、緑間は盛大にむせた。

「っ!?グッ・・・ぅ・・・ゴホッゴホッ」
「ちょ、真ちゃん大丈夫?」

そういって高尾が親切心で背中をさするも、緑間はギロリと高尾を睨む。当然だろう、語尾にハートマークが付きそうな勢いで精液、なんて言われれば緑間でなくてもむせていた筈だ。

「っふざけるのも顔だけにしろ!!」
「ちょ、真ちゃんそれ流石の俺でも傷つくから!!」

傷ついたわーと高尾は言っているが、今の緑間にそれを構っている心の余裕はない。と、そこで緑間は気付いてしまった。

(まさかこいつ、このために!?)

弁当を作ってやると言う名目上、本来の目的は自分の精液の入ったサンドイッチを食べてもらうのが目的だったのか、そう考えた緑間は同時に「なんて奴だ」と奥歯をかみしめた。目的の利益を手に入れると同時に自分の好感度を上げるなんて、と緑間が高尾の策士っぷりに舌をまいていると、高尾は「あのなあ」と口を挟んできたが、緑間はズリ、と座りながら高尾から離れた。

「俺に近づくなこのペテン師が」
「だーかーら!!誤解だって真ちゃん!!俺は真ちゃんの為を思って作ったんだよ!?」
「人に精液を食べさせる事のどこが親切だと言うのだよ!!言ってみろ!!」

怒った緑間が半ば怒鳴るようにまくし立てれば、高尾はふんと威張るように腰に手を当てる。

「まあね?確かにそろそろ真ちゃんに俺の飲んで欲しいとは思ってたし、今回も下心が全く無かったと言えば嘘になるよ?」
「ほらみろ!!大体そんなまずい物飲めるか!!」
「きけって!!あーもー俺のよく甘いって言われてんだけどなー」
「…は?」
「ん?」

緑間は自分の耳に聞き捨てならない言葉が入ってきたので思わず聞き返した。と、高尾は何を勘違いしたのかぎゅっと緑間の手を握って「あ、違うからね?昔の、中学の時の女の話だから、今はもう当然シてないし、勿論真ちゃんだけ」と取り繕って来たので緑間は「そんなことを聞いてるんじゃない!!」と、その言葉を一蹴りした。ああこいつはこういう馬鹿だったと緑間が頭を押さえれば、高尾は「あー」と、ようやく緑間の質問の意味を理解したのかまたにこりと笑う。

「俺のセーエキ、人より甘いって言われるんだよねー。まあ甘いのなんて個人差あるし、真ちゃんのがたまたま苦いだけで」
「ちょ、ちょっとまて。」

そういって緑間は額に手を当てる。高尾の言う事を緑間が聞き間違えていなければ、いま確かに高尾は精液が甘いと言った。が、緑間にそんな知識はないし、ましてそんな話聞いた事もない。とうとう頭が逝かれたかと哀れんだ目を向けられて、高尾は弁解すべく、慌てて緑間に詰め寄った。

「真ちゃんもしかしなくとも知らない!?」
「な、何をだ」
「セーエキって、個人差有るけど甘いんだぜ?」

緑間は、驚愕した。

「そ、そんな馬鹿な!!」
「ほんとだって!!なら飲んでみろよ!!」
「ふ、ふざけるな!!」
「嫌ならこれ食えばいーじゃねーか!!」

そういってサンドイッチを差し出した腕を緑間はガシリとつかんで押し返す。そんな、「これは精液の入ったサンドイッチです」なんて言われた所で食べれられる筈が無い。むしろどう考えても言われた方が嫌に決まっている。それは勿論緑間も例外では無く。

「い・や・な・の・だ・よ!!だいたい精液が甘い筈無いだろうが!!」
「ぬぐぐ・・・!!あーもう!!つべこべ言わずに」

「とっとと食え!!」そう言って、高尾は自分の体重を使って緑間をフェンスにおいやり、突然の高尾の反撃に驚いて隙が生まれた緑間の口に半強制的にサンドイッチをねじ込んだ。カッと目を開いた緑間がサンドイッチを吐き出す前に、高尾は緑間の口を塞いでしまう。が、思わず口の中のサンドイッチを噛んでしまった瞬間、緑間の抵抗はピタリと止んだ。モグモグと食べ続ける緑間に気付き、口から手を離した高尾のしたり顔。緑間はゴクンと飲み込んでから信じられないという顔をした。

「・・・・・・・・・・・・甘い・・・だと」
「なー?だから言っただろ?」

ふふふん、と、得意気に笑っている高尾を、緑間はいまだ信じられないという目で見つめていた。手元のサンドイッチに目を落とした緑間は、まじまじとそれを見つめる。それは確かに白くて、しかも粘着質だ。が、精液特有の青臭さはなく、おそるおそるもう一口食べればやはり甘かった。そして甘いだけでなく少ししょっぱい。余りのリアルさに緑間は高尾を見つめれば、高尾は悪戯っぽく笑った。

「真ちゃんどっちかっつーと甘いの好きだろ?毎日おしるこ飲んでるし。でもさあ、それで真ちゃんが将来糖尿病とかになっちゃったら和成君は悲しい訳ですよ。ほら、精液ってタンパク質含まれてんだろ?甘いし栄養あるし、一石二鳥!!」

そういって緑間の眼前でピースをした高尾のその手を見つめる緑間。なんだかそう言われてしまうと緑間は、高尾を疑い罵った自分が悪い気さえしてきたのだ。が、しかし緑間としては謝るのはしゃくなので、無言でもうひとつ白い液体の挟まれたサンドイッチを取って、これまた無言でかじりついた。そんな緑間を見てきょとん、とした高尾だが、それが緑間なりの感謝だと汲み取ると「ふはっ」と吹き出したのだった。




そうして、高尾が緑間にサンドイッチを作ってから早二週間。高尾は週三回というハイペースで緑間にサンドイッチをつくり、緑間は毎回それを完食していた。日曜日の練習の昼に高尾の手作り弁当を食べる緑間に、宮地は「なにリアルに手作り弁当とかつくってんだよ撲殺すんぞ」とこめかみに青筋を立てていたが、それが『公共の場で精液を食している』と改めて緑間に認識させて、背徳感をくすぐってしょうがなかった。高尾のタンパク質入りサンドイッチは相変わらず甘くて、文句を言うも緑間自身もその甘さが病み付きになってしまっていた。
ーー緑間信太郎は、以外と欲望に忠実だ。欲しいと思えば、それが手に入る程度のものなら手に入れる。
そんな緑間は、こう思ったのだ。

この甘さを、直接味わいたい、と。







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