「あ!!青峰っちー黒子っちー!!」

廊下で見慣れた青と水色を見つけて声をかければ、二人がこちらを振り返った。部活のない日に放課後に二人で居るということは、いつものストバスなんだろう。駆け寄ってみれば青峰っちが片手にボールを持っているのが見えて、それは確信に変わった。

「これからバスケっスか?」
「はい、そうですけど…」
「じゃあ俺、今日はモデルの仕事ないんで一緒に行きたいっス!!」

そういえば青峰っちは楽しそうに笑って了承をしてから「久しぶりにぼこぼこにしてやるよ」と物騒なことを行った。青峰っちが言うと迫力がある。それに「俺も負けないッスよ!!」と意気込んでから、黒子っちの横に俺も並んで歩いた。

青峰っちたちが部活のない日によくストバスに行って居たのは知っていた。しかし俺は仕事が入ってしまうのであまり参加はできていない。基本的にバスケを優先させたいのだが、最近出たCMの社長がどうやら俺を気に入ってしまったらしい。どうも断りずらい相手らしく、マネージャーが申し訳なさそうに俺に頼んでいる姿を見て、仕方なく部活の無い日なら、と仕事を入れていたため、ここ数週間はあまり放課後のストバスには出れていなかったのだ。だから放課後青峰っちたちとバスケをするのは久しぶりで、心が躍ってしまう。やっぱり俺もバスケ馬鹿なのかと笑っていると、靴箱のところで紫原っちがお菓子を片手に待ち呆けていた。ボールを取りに言っていた黒子っちと青峰っちを待っていたらしい。

「ごめんなさい紫原君。」
「ん〜いいよ〜ってかあれ、黄瀬ちんじゃん。今日は仕事入ってないの〜?」
「そうなんッスよ!!だから今日はこのまま俺も一緒に行くッス!!」

そう言いながら靴を履いていると緑間っちと赤司っちが居ないことに気付く。赤司っちは毎日忙しいからストバスにくることはめったに無いらしい。じゃあ緑間っちはどうしたのかと聞けば、「緑間なら後から合流するぜ」と青峰っちに言われた。その間にも紫原っちは黒子っちにコンビニに行こうとせがんでいる。
と、紫原っちのおねだりによってコンビニに居るわけだが。

「…紫原っち、今日ちょっと買いすぎじゃ無いっすか?」

俺の視線の先にあるのは大量にお菓子の入った買い物かご。(見ているだけで吐き気がしてきた)紫原っちはそれにも関わらずまた板チョコを買ってかごに放り投げた。

「んー?そうー?」
「そうっすよ!!!いつもよりもはるかに…」
「今日来るかだろ」
「あ、そうでしたね。」
「…来る?」

主語がない会話にいまいち会話がつかめないまま会計が終った紫原っちたちを追いかけるようにコンビニを後にする。そこで疑問に思っていたことを黒子っちに聞いた。

「今日だれか来るんスか?」
「ああ、黄瀬は知らねえんだな、高尾のこと。」
「タカオ?」

聞いたことの無い名前に首をかしげる。新しいストバス仲間でも見つけたのだろうか。だったら強い相手なのかと考えるだけで心が躍る。青峰っちが少し嬉しそうに口元を緩めた。これは相当強いに違いない。

「どんな人なんすか?強いんスか?」
「バスケはまだ始めたばかりです。そして緑間君の幼馴染です。」
「え、緑間っちの?」
「うん。すげーちっさくて、みどちんもぞっこんだよね〜いつもわざわざ連れてきてあげてるし」
「ぞっこ…!?!?」

バスケはまだ始めたばかりだという言葉に少しがっかりしたし、紫原っちから見ればそりゃあ誰でも小さく見えるだろうから身長は分からない。緑間っちに幼馴染が居たことにも驚きを隠せないが何よりもそのあとの言葉に衝撃を覚えた。

「ちょ、ぞっこんって!?」
「まあな。今日緑間が遅れたのだって高尾を迎えに行くためだしな。」
「ま、マジっすか!?」

頭に雷がうたれた気がした。あの緑間っちが迎えに行くって、一体どんな子なのか。ぞっこんということは女?しかも緑間っちがぞっこんということは相当の美人で…あ、そういえば年上が好きだって言ってたから年上か?それにきっと上品で…と、俺の頭の中で緑間っちの幼馴染についての妄想が膨れ上がっているうちにコートについてしまった。
…と、ここで俺はコートの中に人影が居ることが分かった。大きいのと小さいの。その程度にしか分からなかったが、片方は緑間っちだろう…、…ん?

「お、お前らの方が今日は早かったな」
「こんにちは高尾君。今日もちゃんと来られたんですね」
「エッ!?」

俺は間抜けな声をあげたとほぼ同時に思わず緑間っちの隣にいるその小さな彼を見た。
そう、彼である。

「うん!!もう完璧に覚えた!!」

(ぞっこんって…そういうことっすか)

背丈はざっと130ってところだろうか。その彼、タカオクンは黒子っち達に無邪気な笑顔を向けている。
幼馴染はかわいいお嬢様でも、年上のお姉さまでも無い、小学生の男の子だった。
そりゃ、迎えに行くだろう、小学校低学年(たぶん)を一人でここまで来させるのはいささか心配だ。遂に緑間っちに彼女が、って思ったんスけど…そう考えていると、そのタカオクンが急にこちらを振り向いたと思えば、あからさまな好奇心のこもった目をこちらに向けてきた。じっと見つめるその瞳に思わず後ずさりしてしまう。そのあとに真ちゃんの方を振り返って叫んだ。

「真ちゃん、この人もしかして黄瀬さん!?」
「えっ」
「ああ。よくわかったな。俺たちのチームメイトの黄瀬涼太だ。」
「ちょ、え、なんで分かったんスか!?」

開口一番名前を当てられたのでそう尋ねれども、タカオクンはそれには答えず走ってこちらに向かってくる。なぜだかわからないが思わず身構えていると俺の前に立ち止まって、その小さな左手を差し出してきた。

「おれ、たかおかずなり!!小学校2年生!!よろしくな!!」

そうきらきらとした目で俺をみあげられて、俺はその手を握り返して「よ、よろしくッス」と言うしかなかった。




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