ここ最近はずっと寒い日が続いていたが、今日は一段と冷え込んでいた。冷たくすっきりとした空気に体をふるりと震わせる。気休めにしかならないであろうが手に息を吹きかけ擦り合わせた。が、やはり本当に気休めにしかならない様で体を包む寒さは消えない。

「うう…さぶいです」
「テツはヒンソー過ぎなんだよ…見てるだけでさみい。もっと食え。」
「そういう問題じゃ無いです。青峰君こそ良くそんな格好でいられますね風邪引きますよ。」
「俺はテツとは違ってそんな貧弱じゃねーよ」

そういってふんと笑う青峰君はこの寒さの中コートすら来ていない。先程までは付けていたマフラーと手袋今は手に持っているだけだ。一方の僕と言えばコートにマフラーと完全防備である。だかしかし寒い。青峰君と僕とでは根本的に体のつくりが違うのだろうか。青峰君のように手袋も持ってくれば良かったと身を縮こまらせていたら目の前に黒い手袋が差し出された。横を見れば笑いながら此方に手袋を差し出している青峰君が。

「俺はつかわねーから貸してやるよ。さっきから寒そうじゃねーか。もう後少しだけどそれまで付けとけ。」

そういって受け取らない僕にしびれを切らしたのか半ば無理矢理手袋を押しつけられた。そんな彼の優しさに心までもがほっこりとする。

「ありがとうございます青峰君。」

優しい気持ちになりながら手袋を付けさせてもらいしばらく歩くとようやくコートが見えた。

「おっ。一番乗りじゃねーか。まだ緑間達きてねーけど…先に体暖めとくか。」

そういって羽織っていた薄手のカーディガンすらも脱ぎだした青峰君はさすがに寒いのか二の腕を擦った。がしかしすぐにボールを取り出すとドリブルをしてゴールしたまで走っている。それをコートを脱ぎながら見ていた僕に、コートの真ん中まで戻ってきた青峰君はぽいとボールを投げかけた。反射的にゴールの方へボールをタップする。するとそれを分かっていたかのように青峰君はもう既にゴールの下まで来ていて、そのままボールを受け取りダンクを決めた。ガシャアン、という音がコートに響き渡る。
このコートで僕たちは日曜日、練習がないときにスタメンでバスケをしている。全く休みの日もバスケなんてたいがい呆れてしまうが、それは僕たちはバスケが好きだと言う証拠なのだろう。日程が合えばみんなでバスケをして、今日は待ち合わせていた僕と青峰君が一番らしい。モデルをやっている黄瀬君のように忙しくて来れない人も勿論いるが。リングにぶら下がっていた青峰君は、たん、と地面に降りる。するとそのすぐ後に聞きなれた間延びする声がした。

「やっほ〜。早いねー峰ちんと黒ちん〜」

振り替えれば紫原君がいた。やはり手には大量のお菓子が入った袋を抱えている。(心なしか何時もより多い気がする。)片手にはポッキーがあり、それをポリポリと食べ始めた。

「おせーよ紫原!!っつかどんだけ買ってんだよ!!」
「だってー今日も来るんでしょ〜?」

そういって楽しそうに笑う紫原君に納得した。そうか、久しぶりにくるあの子の為にいつもより沢山のお菓子を買ったのか。納得しながら、僕も楽しみで口許を綻ばせた。

「ミドチンも何時も「何故俺が」って言いながらも連れてきてあげるよね〜」
「なんなかんや緑間も好きなんだろ。」

そういって呆れたように笑った青峰君は紫原君の袋から勝手にポッキーを取って食べた。ついでに僕にも差し出してきたのでありがたく受け取って食べてから、これが紫原君の物だと気づく。「勝手に取らないでよ〜」と言いながら頬を膨らませた紫原君は、しかし新しいお菓子の袋を開けて中のチョコレートを僕と青峰君に分け与えた。

「あんまり食べると、緑間君達が来る前に食べ終わっちゃいますよ?」
「ん〜、そだね〜」

そう言ってお菓子を食べるのを止めた紫原君を見ながら、早く来ないかと心を踊らせた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -