軍師すら難攻不落

「こんにちはー」
「お待ちしておりました。さぁ、こちらへどうぞ」

ニコニコと笑ってる兵士さんに案内されて、城の中へ入る。

私は城下で有名な反物屋の娘。今は若女将だけど、将来は女将を継ぐ。だから、お得意様である竹中さまに直々にお届けするのは私の仕事。まぁ、竹中さまが私を指名して下さっているっていうのも理由だったりするのだけど。





「失礼致します、竹中さま。
『菊水』の若女将、真帆です。お着物をお届けに参りました」
「あぁ、真帆かい。入って」
「では、失礼致します」

両手で庄子を閉めて、竹中さまに向き合ったら、ばっちり視線が合った。……びっくりしました。あの綺麗なお目とばっちり合ったんですもの。

「…竹中、さま?」
「ん?何だい?」
「何か、?」
「何もないよ」

そんな美しい顔(かんばせ)で微笑まれて、私は湯気が出そうです。私は男性に免疫がないのですから!

俯くと、くすっと笑われた。


薄い和紙をそっと開いて、今回の品を取り出す。

「ご注文のお品はこちらの水浅葱と藤紫でよろしいですか?」
「うん」

広げて竹中さまの肩にふわっとかける。


「ふふっ」
「?どうしたんだい?」
「いえ、何でもございませんわ」


……言えない。

竹中さまの肩に掛ける私、まるで新妻みたい、なんて。
…言える訳がない。

「…ふーん?」
「ど、どうなさいました?」
「…何でもないよ」
「左様でございますか」

にっこり。真帆の笑顔にすっかり毒気が抜けた。…全く、この娘は…。

「こうやってると、夫婦みたいだね、僕達」
「へっ?!」

からかってみると、ボフンッと湯気が爆発するような音。後ろでは真帆が真っ赤になっている。

「…全く君は……」




軍司すら難攻不落




(た、竹中さまはお戯れが過ぎます…!)
(戯れ、ねぇ…)
(か、からかわないで下さいまし…!)
(からかってなんかないよ)
(へ?)
(…君は鈍いね……)


こんなに攻めても落ちない。
なんて、君は、手強い。


end.





■←藤紫
■←水浅葱

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