森の中を歩く元親の表情を伺った。姫抱きにされているため見上げるような状態で、左頬は彼の素肌にふれていた。

「元親兄様…。ごめんなさい。私が無用心なばかりに大切なお宝を…」


真帆を抱いているため宝の入った箱は諦めたのだった。

「ばぁか。言ったろうが、お前さえ無事ならそれでいいんだよ。」

「でも…」と続けようとしたら口を塞がれた。

「ん…、んんっ…。」

口が熱を孕む。どうしてこうも彼は不意打ちなのだ。

「俺はやっと見つけたんだ。最高の宝をな。…お前以上の宝なんてこの世にはねぇよ。」

素肌が密着しているからだろうか、彼が喋る度にその振動が直接伝わってくる。
まるで彼の想いと熱が直接伝わってわってくるようだった。


彼が立ち止まった。ゆっくりと下ろされると地面に立たされた。

そこは断崖。そこから先には海が広がっている。

空が白みはじめていた。

「真帆…。」

潮風がそよぎ、朝の風を運んでくる。


優しい目で見つめられ、その優しくも強い視線は反らすことはできない。

「真帆、俺様と…その…なんだ……、一緒…に」

「あ゙〜」と彼は頭をガシガシとかき照れ隠しをした。

「俺様の嫁になれっ!!お前はもう俺のものなんだっ!」

「…っえ、あのっ」

突然過ぎる告白に嬉しいがどう反応していいのかわからなかった。
彼に私自身恋心をいただいていた。だが、それも身分が違うと自分を押さえていたのだ。

「この想いはゆるがねえ。一緒に真帆と生涯を添い遂げてえんだ…。もうお前無しじゃ…」


ふわりと抱き寄せられた。優しくも、しっかりと。

そして耳元でそっとつぶやかれた。

「お前無しじゃもう駄目なんだよ。」


もうどうかなってしまいそうだった。



「…私などでよければ元親兄様と…真帆も添い遂げとうございます。」


「もう…絶対に離さねえから。絶対に…。」



太陽が水平線から顔を出し、二人を照らした。

重なる唇は薄紅。

頬を染め、見つめ合う瞳はビードロ。
流れるような黒髪はシルク
白い透き通る肌は陶のよう。







――鬼はついに宝を見つけたのだった。


fin.

―篠宮様に捧げる西海の恋物語


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