昔から彼女はとてもモテる。
元々誰にでも分け隔てなく優しく、大人な頼れる女性…それが海希だ。
それはこの会社に入って一層際立っていた。
だから多々、会社仲間に告られる事があった。
だがその度に彼女はこう断っていたらしい。








『え?、え?、えと…ごめんなさい!
付き合ってる人がいるの。
いや、貴方は本当に頼りになるしいい方よ、うん!
でもね、貴方とは…いい仕事仲間でいたいの…
このままの…ね?』








可 愛 い い
だが、海希…オメェ…お前……おい!




「フォローのつもりが全然なってない。
仕事は何でも任せてって奴が恋愛事に限ってはお手上げ…
そういうギャップ、cuteだと思うぜ?」

「伊達おまっ」

「HA!安心しな、あんたの女を取る気はねぇよ」





一度からかった時は面白かったけどな?
そう言って政宗が腰を上げる。





「まぁ、精々前田や猿飛に取られないよう気を付けるんだな」




good luck、と掌を返しながら去っていく。
眉を寄せながらそれを見送ると、また深い溜息が漏れた。





『付き合ってる人がいる』
…この言葉によって色々面倒な事になった。

断られた男共が彼女の半ストーカー状態になった。
だがそれに彼女は全く気付いていなかった。
それに気付かなかった俺もまぁ、やっちまったが。

日に日に男共の数は増えていき、何も知らなかった俺は普通に海希と待ち合わせていた、
仕事帰りや、朝車で送ってやる時に。
暫く経って同じ部署の奴から
『長曾我部さんて海希さんと付き合ってるんですか?!』
なんて言われたもんだから驚いた。

社内恋愛禁止ではないが、会社内で知れたら面倒だと思い互いに秘密にしていたが
…仕方ねぇ。





「前田、猿飛…」





指折って数えるのは会社でも上位に入る女たら…モテる奴ら。
当然のように海希にも告り済みだ。





「…伊達」





そして何だかんだで一番危ねぇ奴。
ナンバーワンにモテるし、まぁやり手だからな…あの野郎。





「…」






俺が今ホワイトデーに悩むのはこいつらの事もある。
前田、猿飛、伊達。
今こいつらはフリー。
そして海希、こいつは恋愛沙汰になると本当にガードが弱い。
誰にでも優しいからな…優しすぎっからな…。
軽い訳じゃねぇ、純粋すぎんだ。
だから少し目を離せばいつ奴らに言いくるめられるか分からねぇ。

それでも今まで長く付き合ってきたのは、『元親といる時が一番安心出来て楽しいし幸せだから』と言ってた。
恋人の俺にとっちゃあこの上ねぇ嬉しい褒め言葉だ。
素直に嬉しいさ。
まぁ少しだけ言うなら
バレンタインやホワイトデー等、いわゆる恋人同士の日
本来ならプレゼントをあげて一緒にいて…って俺はやりたい。
だが彼女はあまりものを欲しがらないのだ。

海希の家は貧しく昔からバイトで学資金、生活費諸々を稼いでいた。
学校では成績優秀で本当に親孝行でしっかりしていた。
彼女は尽くすのが大好きなのだ。
逆に尽くされるのにはどうすればいいのか分からない性、
だから今まで祝い事と言えばディナーのみ、それも割り勘。
彼女の仕事が忙しいというのもある。

俺はあげたい、だが
彼女は毎回ディナーをとても楽しんでいた。
喜んでくれているならいいか、とも思っていた。






だが物足りねぇんだ、俺には






「………」







恋人なのに一向に距離が変わらねぇ、は言いすぎかもしれねぇが。
だから他の男にまかれねぇかと心配なんだ。




長く一緒にいたから余計、考えちまう








…あいつはもっと喜ぶ顔をするんじゃねぇかと







俺はそれを見てぇ














どうしたらそんな顔が





その笑顔が












俺だけのものになる―――?

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