「……」




目の前を行き交う男女、いやもしかするとカップルなのかもしれないが。
彼らをじっと目で追いながら元親は肩を落とした。

別に彼らが羨ましい訳ではない。
元親にも好きな人がいる。





「―――?」





その時ピタ、と頬に感じた冷たいもの。





「政宗」

「yes」





頬にあった缶コーヒーを受け取り、隣に座った政宗を見る。

奴は伊達政宗。
俺と同期で入社した同僚だ。
政宗は自分の缶コーヒーの蓋を開けると口を開いた。





「whats up?」

「ん?あぁ、ちょっとな」





そう返すと、こちらを黙って見たまま缶を口に運ぶ政宗。
離すと不敵な笑みを向けてくる。





「White Dayか?」

「な、テメ何でそれを…!」

「HA!Bingoか!」





クックックッ、と喉を鳴らして笑う。





「そういやあと一週間だもんなぁ。
Valentine's-Day、White Day、friendship anniversary(付き合い記念日)…
元親が頭抱えるのはこういう時と決まってる」

「んな訳じゃ…ねぇ…」

「悩みの種は海希だろ?」




苦笑し冷や汗を掻きつつ目線を横にずらしていたが
一つ大きな溜息をついた。




「丸分かりかよ」

「俺を甘く見るなよ?モロバレに決まってんだろ」




ニヤッ、と笑う政宗。
確かに今一番困ってんのはWhite Day、
そして海希―――俺の女だ。








俺には大学から付き合ってる女がいる。
ひょんな事で知り合って、気が合ってずっと
就職も大手の会社に二人採用が決まり今に至る。





「あいつは隣のデスクだからな。
だいたいこの3つのeventの話になると直ぐテンパる」

「…ったく」




気付けばそうだった。
仕事熱心で上司、同期、後輩からも慕われている海希。
部署が違うからかいつでも会える訳でもない。
さらに彼女は器用かつ真面目だから沢山仕事を任されて忙しい。
だが一つだけ決定的な弱点がある。





「Loveの事になると面白い位分かりやすいからな。
…というより免疫zeroだ」





再びクツクツと笑う政宗。

そう、…アイツは恋愛免疫が本気で0なのだ。

[ 1/8 ]

[*prev] [next#]
[]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -