『―――直ぐに戻ってくる。そしたら挙げようぜ、祝言をよ。
約束だ』





貴方様は覚えておりますか

とろろは一日たりとも忘れておりません

あの時の約束
―――元親様との約束を。








「アニキが戻ってこねぇんです。爆発に巻き込まれて…そのまま――」










私と元親様は恋仲だった。私の父は長會我部家に仕える家臣。私は姫として大切に育てられ元親様に出会い、恋に落ちた。
そして迎えた祝言の日、同時に起きた

“毛利軍の襲撃”

瀬戸海に現れた毛利の水軍。現れて何もしないならまだ良かった。
だがそうもうまくいかなかった。
瀬戸海に弾が落とされたのだ。

当然この状況を無視する事など出来なかった。元親様は行かねばならぬお人だった。
彼は出陣していった。
心配は要らない、そう笑いかけて―――。




暫く経って耳に入った長會我部軍の勝利。その一報に安心しきっていた。
だから帰ってきた元親様の部下の方々が告げた言葉に、呆然と立ち尽くすしか術はなかった。










『あんたの策もこれで終めぇだ、毛利』

『…』

『あんたが居なくなりゃああんたの部下ももっと幸せになれんだろうよ。
その首、貰い受けるぜ』



――ドオォォォォン!!



『―――何だ?』

『アニキィ!!!』

『―――かかったな長會我部』

『何?
――――――!!!』

『我一人では死なぬ。貴様も此処で海の藻屑と消えよ――』



――ドオォォォォン!!




『アニキ!!アニキィィィィィ!!!





毛利の首を取ろうとした刹那だったという。二人の乗っていた毛利軍の船が突然爆発した。
爆炎を上げ火に包まれ、最後残ったのは海に浮かぶ残骸。

本当に一瞬の出来事だった。



皆様は何日も待っていた。元親様はこんな事で消えるお方ではないと知っていたから。
三日待った。
十日待った。
陸も海辺も探しに探した。
それでも彼が船に戻ってくる事はなかった。


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