私は元親様を屋敷に招き入れた。
二人縁側に座って。




元親様は全て話してくれた。
戦の事、私を故郷へ返した理由
彼の気持ちも―――。






彼は大きな問題を抱えていた。
それは国を左右する重要な事項。




“密偵がいる”





長曾我部側の情報が外部に漏れている。
それは元親様が妻を娶り
私と恋仲になった頃だった。

此方側の行動が筒抜けになっていた所為か
何度も予想外の襲撃を受けた。
最初は偶然だと思っていたが
敵が確実に弱点を突くようになり確信した。
捕えた敵からは富嶽の構造、人員、軍備諸々の資料を収集して。
それは特別な印を押してあり
城中の限られた者しか手の届かない資料。

故に元親様は孫市様ら雑賀衆を雇ったのだ。
策も全て孫市様と練り城の者には一切を秘密にした。

正妻を除いては。









―――全ては元親様の正妻、春蘭様が糸を引いていたのだ。







私は信じられなかった。




正妻は大きな権力を持っている。
主に何かあれば国をも動かせる力を。
そしてそれは主との厚い信頼の下で可能となる。






何故…そう思わざるを得なかった。





「春蘭は豊臣に内通していた」





孫市様が突き止めたという。
理由は金と一族の存続。
彼女もまた政略結婚だった。
だが…元親様と春蘭様は互いの信頼も厚いと有名だった。





「確かに春蘭は至れり尽くせりの女だった」





尽くす女だった。
政も支える、賢い女。
配慮も行き届き器用でまさに完璧というに相応しい女だった。
だが…何かが足りなかったのだ。




「時々何考えてるか分からなくてな」




よく笑いよく気を回すが
本心なのか芝居なのか
違和感があるところがあった。
確かめるにも疑いようがない程完璧なのだ。





「それに――お前と居る時の方が楽しくてよ」





初めて会ったあの森で泣いていたお前が
あんなに笑ってはしゃぐようになって
嬉しくてよ


本気でお前を守りてぇと思った



政略結婚なんざ関係ねぇ



お前が好きになってった





そういえば亜希が目を瞬いて。
頬を赤らめて元親を見た。




「そういうとこが分かり易すぎんだっての」




ポン、と頭に手を置かれて





「だからよ」





『お前に何が出来る!?』





「ああでもしなけりゃ」





お前を守れなかった






「済まねぇ、亜希」

「元親様…」





亜希との関係が春欄にばれているのは
届かなかった文で確信した。
このままでは彼女を巻き込んでしまうだろう。
一度遠ざけるのが彼女の安全の為にもいいと思った。
例え…嫌われても。

だから再会を喜ぶと同時に家に帰した。
信頼ある家臣に囲まれていれば彼女の領地にも目が届く
…そう踏んだのだ。




「…嫌いになったか」




言い過ぎた、気付いたのはお前が泣きそうな顔を見せた時だった。
折角の逢瀬だというのに。守る為とはいえ彼女に当たってしまった。

サヤカにも呆れられた。
何故そんな事を言った、と。

お前と話せないまま今までずっと
申し訳なさで一杯だったのだ。




「嫌な訳、ありませぬ」





私はずっと元親様を忘れられませんでした





「心の中では…貴方様を待っている自分がいたのです」




何の確信もない





でもやはり私には貴方様しか考えられなかった





離れてからやっと気付いたんです





「何か事情があったのではないかと、思うようになりました」

「亜希…」





あれから証拠も掴み春蘭を含め彼女の一族は討ち取られた。
正妻の裏切り…この事態を収拾するのに時間は掛かったがやっと
元親はやって来れたのだ。
富嶽も改良し、人員軍備共に大幅に増やして。





「只…」





元親様は…孫市様と昔から仲睦まじかったのでしょう?





そう言えばガシガシと頭を撫でられて。





「バーカ、妬いてたのか?」




只の古馴染だ





「俺には…お前しか見えねぇよ」





こんなんでもな





俺が好きなのはお前だけだ




だからよ






「今度は正室として―――ずっと俺の傍に居ろ」

「……!!」





涙が溢れていた




言いたい事は沢山ある筈なのに
言葉にならなくて







「はい」







やっと言えたのは味気ない言葉



でも精一杯笑えば肩を抱き寄せてくれて




彼の肩にそっと頭を凭(もた)れた。



夢桜の華
(私の心は永遠に)
(貴方様のものです)

end.

亜希様
半年以上もお待たせしてしまい申し訳ありませんでした…!
アニキ切甘孫市姉様登場という事で…如何だったでしょうか。
BSR3未プレイの篠宮なので孫市姉様じゃないかもしれませんorz
しかも出番少ない…。
話も長く複雑化した気が…('ω`;)
こちらで良ければ貰ってやって下さい><
リク有難うございました!

20120116

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