「こいつはサヤカ、雑賀衆の頭…ってぇ!!打つなよ!」

「雑賀孫市だ。以後宜しく頼む」




その人は突然やってきた。
傭兵集団雑賀衆、その頭領雑賀孫市様。
元親様が暫く雇うらしい。
彼が雇う等珍しい…と思った。

長曾我部軍が誇るカラクリ兵器。
元親様は戦になれば自身のカラクリ兵器で出陣する。
他国にもこれ程大きい飛び道具はなく
国の戦力は格段に秀でているのに。

近く戦でもあるのだろうか。
だが聞くにも聞けなかった。
彼は戦事について詳しく話してくれない。
だから尚更に。




雑賀衆を雇ってからというもの元親様はとても忙しくなった。
一日の大半を城外で過ごすのは当たり前
船を出し夜は戻らない、そんな日も多かった。




でも何よりも…元親様は孫市様と一緒に居られる事が多くなった。
二人は古馴染であり今でも交流は深いと耳にしている。
見ていてよく分かった。
現に元親様が孫市様をサヤカと呼んだ時には
彼の頭を叩いて叱責する等
まるで城主と傭兵とは思えない親密ぶり。

策を練っているとは聞いたが
時折城に戻ってこられた時には二人一緒に部屋に入っていくのだ。






何故なのか、胸が痛んだ





お茶を入れていけども
渡せば手持ち無沙汰。
こっそり耳を欹(そばだ)てれば
戦力的優位や接敵機動等難しい言葉ばかり聞こえて。
あぁ、元親様も孫市様も本当に戦を生き抜いてきた方なのだなぁと
尊敬と共に羨望も湧いてきて。

何となく私が入ってはいけない雰囲気を感じて
そそくさとその場を後にしてしまう。

そんな日が続き私はお茶を出す日もなくなっていった。

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