全ての始まりはあの…雨の日だった










『はぁ…はぁ…っ』

『逃がすんじゃねぇぞ、その女を捕まえろ!!』




バシャバシャと忙しない足音が響く。
暗くなってしまった森を、私は必死に走り続けていた。




『あぁっ!!』




バシャン、と大きな音を立て転んだのは私の方。
足元も何も見えなかった。
闇が全て隠してしまっていて。




『やっーと見つけたぜ…姫さんよぉ』

『ちょこまか逃げやがって』

『あっ…』



ギロ…、と動いた目が私を捕らえて。
やっと動いた体は逃げるようにずり下がるしかなかった。
泥塗れな地面を蹴るも虚しく
背はトンッ、と木にぶつかる。




『もう逃げられねぇなぁ』

『い、嫌…どうして…っっ』

『ひっひー!馬鹿な女だぜ。態々そこに逃げるなんてな』

『もうメソメソ泣く事はねぇんだぜ?』

『嫌…止めてっ…離して…!』

『これからは俺達が可愛がってやるんだしよぉ!!』

『嫌っ!
……嫌あぁぁぁぁぁぁ!!!』



藻掻く私の腕をとる男達。
力で敵う筈もなく、強い力で引かれたら何も出来ない。
只叫ぶ事しか出来なかった。



その時







『ぎゃあぁぁ!!』

『ぐあぁっ!』




一瞬だった




男達が吹き飛び倒れて。





鎖が闇に光り
大きな武器が戻っていく。



それは槍…というには大き過ぎて




そしてそれを掴んだ人影もまた大きくて。

ドサッ…と座り込んでしまった。





『     』




声が聞こえた




だが理解出来なかった




分かるのは大きな影が近付いてくる、恐怖





『大丈夫か』

『――!!!
嫌あぁぁ!!!』



伸びた手が酷く怖くて。
思わず弾き返して。
両腕を抱えて蹲っていた。


ガクガクと体が震えて

止まってくれなくて。







この人もまた
私を連れ去りに来たんじゃないかと
混乱する頭じゃそんな事しか浮かばなくて。



怖い




怖い




只怖くて。



目を瞑った。










―――ギュッ…




刹那
温かい何かが全身を包んで




『済まねぇ』




それはとても優しい力で




『怖ぇ思いさせちまったな』




そう言えば少し力が強くなって

私はうっすらと目を開けた。




『あと少し待っててくれな、俺が』




守ってやるから―――。




この先は覚えていない




目を覚ました時には布団の上で。
町の宿にいた。
そして数日後従者がやって来て
私は家に連れ戻される事になった。

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