元親様の消息を聞いたあの日からもう何ヶ月も経った気がしてならない。10日ちょっとしか経ってないというのに。



「元親様…」



襖を締め、誰も居ない部屋で布団を握り締める。そう、此処には彼も居た。あの頃は。
彼の腕、私の体をいつも包んで抱き締めてくれて。
目を開ければ、優しい眼差しに見つめられていて。
それは戦の時とは違う、男の人の目で。




『心配は要らねぇ』




あの時の瞳もそうだった、だから
大丈夫、無事帰ってきて下さる
そう思っていた。








元親様






「今何処におられるのですか…?」




何故お姿を見せないのですか

生きておいでなのでしょう




「生きて…っっ」



溢れた雫。いつもなら拭ってくれた。
彼は此処に居ない。

ならば唯溢れるしかない涙、想い。



「元親、様…っ」




貴方様が居なくなる等、私には考えられぬのです




「どうか…」




戻ってきて―――。
























―――『   』





……?





『   』







え…?―――








――此処は何処なのでしょう
誰か居る気はいたしました

気が付いた時そこは真っ暗な場所だった。



『         』




元親様…?



暗闇に唯一見えたのは彼だった。





『      』




元親様、元親様!!







『      』





待って…お声を、何と言っているのですか?





何か喋っていた。でも何も聞こえなくて
彼は寂しそうに笑うだけで





―――お待ち下さい…!





行かないで









怖くなった












彼は背を向け次第に離れていってしまう。






酷く怖かった。







行かないで―ーーーー!!!―――




反響したのは自分の声。視界には伸ばした手、彼に伸ばした手。
でもどんどんその背は遠ざかっていく。











どうして





離れていくの






もう貴方様は






手を

伸ばしても―――。

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