「あの日は悪かったよ、元親」






あの夜から二日が経っていた。
港には慶次が送りに来ていて。




「ちょっと調子に乗りすぎちまったな、あはは…」

「…ったく、アンタらしいぜ」

「でもそれなりに楽しかったろ?
京も」








『元親様』








「…まぁ、な―――」



























それから俺達は船を出した。






『これがあちきの、商売なのでありんす』






どうしてまた






泣いてやがった









「……」








俺が…泣かせたのか












『あちきが昔、武家の者でありんしたと言えば…
信じてくんなましんすか』









アンタと俺は…初対面の筈だろ










『貴方様の正妻でありんしたなら
抱いてくんなましんすか』









何故そんな事言った?―――










俺を見て









ンな辛い顔すんじゃねぇよ







「……」








俺はアンタに何も出来ねぇ













『弥三郎』














期待すんじゃねぇ









アイツはもう―――「元親様ぁ!!」








耳を疑った




目を向ければ浜に見えて








必死に走る女がいて





「え、女?」

「海に入ってくるぞ!?
おい、身投げか――ってアニキ!?」




―――ドボォ!!

騒めく子分達を尻目に海に飛び込んだ。

























(冷たい…)









ゴポッ…









(暗い)








ゴポポ…










(あぁ…あちきは)










『そいつは死んだ』










今度こそ死ぬのでございんすね…










でもどうして














光が―――…





「―――…ゲホッ、ゴホッ!」
「馬鹿野郎が!
アンタ死ぬ気か!?」








見えた、光が





青い空が







彼が―――。





「どうして来やがっ「『この…』




『桜の花が…っ』






ギッ…






『10回咲いたら…』







ゥ…―――







『弥三郎がね、珱をお嫁さんにする』







ポタッ…







『合い言葉は…っ』




『紫桜の簪』





―――ギュッ、

刹那、代わりに言ってくれたのは彼で。
抱き締めてくれたのは彼で。






「本当に…お前だったんだな」

「元親、様…」

「会いたかった…ッ」







珱―――ッ…。

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