―――ドッ、

何が起きたか一瞬分からなかった。
目の前には夕凪がいて。
その後ろには天井が見えて。





俺はこいつに押し倒されているのだと分かった。





ッ…

途端着物が、両の肩口が崩れて。
白い肩、鎖骨、胸の谷間までが露になり
目を細めた。





「言っただろ夕凪、俺は…アンタを抱く気はねぇ」

「元親様は…っ」









声色が





変わった











「あちきが昔、武家の者でありんしたと言えば…
信じてくんなましんすか」











貴方様の正妻でありんしたなら





抱いてくんなましんすか











「!!」











『―――この桜の花が10回咲いたら
弥三郎がね、珱をお嫁さんにする―――…』











ド!


「っ!」

「おい」







直ぐだった。
元親と夕凪の位置が逆転していて。

厳しい目が夕凪を捉えていた。







「嘘でも、」








本当でも








「止めとけ」










ンな事言うのは。






言えば彼女が微笑んだ。










「これがあちきの、」










商売なのでありんす










「………」











その笑顔に




いい言葉が浮かばなかった











「…俺が抱くのは、一人だけだ」






「一人…」





「そいつは死んだ」








死んだんだ







―――気が付けば手を離していて









「―――…先に帰る、風来坊」

「…えぇ!?も、元親…って、待てって!!」







―――夜は終わった

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