『元親、足元何か落ちてないか』

『―――ん、こりゃぁ』

『簪だねぇ』





桜が描かれた玉簪だった。
きっとあの時の擦れ違った女の物だろう。
だから届けに来た…それだけだ。






「さっき女が一人此処に入ってくのを見かけたんでな
金箔に桜の着物着た女だ
落としてったからよ、届けに来た」

「桜の花…」




―――ガ!…

目を丸くしていた女がハッとして
音の場所に目を向けた。





そこには此処の主ともう一人、女がいた。
新田様、夕凪様…と周りの女達が次々と頭を下げて。




「長曾我部様、前田様
よくお越し下さいました」




膝を付き二人は頭を垂れる。




「長曾我部様の戦場での御活躍、
そして前田様の御家への御尽力、聞き及んでおります
―――今宵は我が店自慢の娘…夕凪も
御目にかけて下されば、幸いにございます」




頭を床に付けたままの女の背に手を置いて言う新田。
夕凪様が、太夫様が…と当たりはざわめき始める。




最高位の遊女―――太夫。
成る程、国主には手厚い待遇とそれ相応の金を…ってか。


周りの遊女は渋々退き始める。
だが風来坊は両腕の遊女を胸に閉じ込めて言った。




「俺のとこは十分間に合ってるからさ、
西海の鬼が夕凪ちゃんと行くって」

「ンなっ、何アンタ勝手に…「おお!!左様にございますか!!
御座敷なら御用意出来ております、夕凪!」


「…ってアンタも話聞きやが―――」




ギッ―――…

刹那指に絡み付いたのは、細い指



見下ろせば手と同じ、温かな笑みに
言葉を失った



柔らかく優しい
花のような微笑みに
どうすればいいか、分からなくなる




「元親様」

「!」

「此方に…」




細く白い…女の手。
そっと手を取る女に引かれるまま、離れた部屋へと連れて行かれた。

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