「ようおこしやしたなぁ
今宵はゆるりとしてっておくんなんし」







トクトク…、と継がれる酒。
広い座敷には甘い香りと沢山の女。

別嬪中の別嬪…そう風来坊が絶賛する京の女
その中でも一際いい女が集まる遊女屋



入るつもりはなかったが仕方ねぇ




「四国を治めなさったあの長曾我部様にお目にかかれて
わっちは光栄でありんす」



隣で酒を継ぐ女が微笑む。
風来坊の方を見れば、まぁ予想通り
文句無しってふうに女を両手に抱えてやがった




「元親、そんな不貞腐れた顔すんなって!」

「慶次様、今宵はわちきの部屋に来てくんなましね」

「いいえ、慶次様はわっちと一緒でございんす!」

「分かったって!
俺はどっちとも一緒にいてやるよ、それでいいんだろ?」

「「慶次様ぁん〜」」




すっかり浮かれてる野郎に頭を掻く
俺は女抱きに此処に来たんじゃねぇっての




「元親様、わっち達もそろそろ行きんせんか?」




グイ、と腕を絡ませてきた上臈。
まぁ想定してたが。




「ちぃと待ちな」






『―――この桜の花が10回咲いたら
弥三郎がね、珱をお嫁さんにする―――…』






―――チャン、

俺はただ、届けに来ただけだ




「アンタ、この簪に見覚えねぇか?」

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