「―――…零〜!」

「わっ!何!?」





放課後。
両肩を叩かれ振り返る。



「なんかここ最近ずっと悩ましげな顔だよね。今も肘なんか付いて、」

「…」

「もしかして…好きな人できたの!?」

「はぁっ!?」



思わず声を荒らげた。



「ん、図星?」



目をキラキラさせる友人に「そんな訳ないでしょう!」と反論して。



「ボーッと外見てたじゃない」

「見てたけど…」




確かに見てたけど…思い出していただけ

あの日を―――






『―――…おぃ、乗りな』






突然横に付いたバイク。
降りてきたのはヘルメットを被った長身の男。
身に覚えがないのにずかずかと近づいてきて。
『は?アンタ誰よ』と言うやいなや引っ張られバイクに乗せられた。
『いいから乗れ、遅刻すんぜ』と言われヘルメットを被せられ、絆創膏と、いつの間にか取れていた名札まで渡されて。





『げっ、俺が間に合わねぇ!じゃあな!』





学校に着き、混乱だらけの私を置いていってしまった。
あの人。全てが強引だった。
なのにどこか許せた。

顔も名前も知らないあの人が誰なのか、なぜ助けられたのか。
男なんて、





『なぁ、ねーちゃん。これから俺達と一緒に遊ばない?』




ろくでもない馬鹿と




『零さん、カツアゲされたんです。助けてください!お願いです!!』




弱っちい奴

それしか知らないのに。









「―――…じゃあ何考えてたのさー、教えてよ!」

「やだ」

「はー!?零酷いー!!」

「どうせ私は酷い人よ」





そう、酷い人




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