(いけない…間に合わない…!!)






肩に掛けた鞄が揺れる。
落ちないよう支えながら零はひたすら走る。

今日は待ちに待った高校の入学式だ。
しかし途中事件に巻き込まれ、かなりの時間を食ってしまった。

電車で痴漢にあいかけた女性を助けたのだ。
相手は鼻ピアスをしたいかにもチャラい男。
だったが、零はそういう人の嫌がる事をどうしても放っとけない性格で。
気付けば「その手を離しなさい」と男の腕を掴みあげていた。
男は「な、何だよお前」と声を荒らげたが、冷えた瞳と声に戦いて。
逃げるように電車を降りていったのだった。
―――そのあと女性や駅員からお礼を言われ、周りの乗客からも拍手を貰い嬉しかったのだが…なかなか抜け出せなくて今に至る。



「―――きゃあ!!」



足が縺れた。起き上がろうとしたが



「い…たっ…」



膝を大きく擦り剥き、血が溢れていて



(…っ、)



自然と呼吸が乱れていく。
時計ではあと、5分。どうやっても間に合わない。



(どうしよう)



その時、






―――キキー!!


タイヤが擦れる音が、聞こえた。

[ 10/14 ]

[*prev] [next#]
[]






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -