私は織田軍に属していた。

光秀、帰蝶、蘭丸と同じ…軍を率いる隊長―――それが私。
家の代で生まれた時から織田の配下として育てられ、刀に弓、馬や槍―――あらゆる武術は全て体に叩き込まれてきた。茶道や華道、書道などの嗜みもだ。



その悉くは御家の為―――そう、言い聞かせられてきた。



そしてそう…信じていた。



だが私はどうしても納得出来なかった、織田軍のやり方を。降伏した軍さえも、生き残りさえも皆殺しにするその行いを。



『た、助けてくれぇ…』

『……』



掴まれた足首。瀕死の兵に助けを求められて黙って見下ろす。

≪ザシュッ≫

しかしその音と共に男の体は、命は地に崩れ落ちた。



『相変わらずですね。黙って見下ろすのはそんなに楽しいのですか?』



あれはとある日の、…いや、いつもと然して変わらぬ日の話。

ゆらゆらと顔を上げ、鎌を引き抜く。その男は明智光秀。
死神…か、奴以上にこの言葉が似合う男は居ないだろう。そう心の中で呟く。

光秀は満足そうに口元を引き攣らせ笑いながら、私の顔を覗き込んだ。



『私はお前とは違う。放っておいてもいずれ死ぬ輩に最早価値などない。刀を振るうだけ時間の無駄だ』

『おやおや…冷たいですね、まるで氷のようだ。
冷たく鋭い、そして非情…貴方の剣術のよう…』

『黙れ光秀、お前の話は無駄に長い。
…戦は終わった。―――退くぞ』



見向きもせずに立ち去る。だが、



『全く、真面目な方ですね…。それはそれで貴方らしいですが、くくく…』



そんな呟きが聞こえてきて。…その発言に対して意味はないことは分かっている。

ぼやく光秀を黙って睨み付けると、馬に跨った。喉まで出掛かった言葉は声になる事はない。



私は何時も通り無表情の面を被り続ける、それだけだ―――。




…そんな時だった。あの男―――伊達政宗と会ったのは。

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