29

分からない。どうすればいいか分からない。
家族を失った日からずっと、ずっと。己が信じるまま生きてきた。

“強くならなければならない”。

もう何も失わない為には。



『……』



その為には何だってやってきた。
情けを捨てて敵の家を皆殺しにする事だって、焼き討ちにする事だって。
自分を照らす赤い炎からは熱さなど感じず、木片を焼く音が空しく戦場を飾り立てる日々。
でも火に照らされる中、眠るように死んでいる子供を見て。

この子の生を私が奪ったんだと。

家族を私が奪ったんだと。

―――同じ光景で気付けば私は殺す側にいたことを知って。



何が正解で何が間違いなのか。
分からないまま悔やんで、人知れず涙した。



でもそんなこと、何になる?



―――いつしか涙は出なくなった。



『…』



…頬に、体に。何度も何度も、何事もなかったように血が飛んできた。
そして織田に戻る。
嘘の己で全て覆って。

―――これでいいんだと言い聞かせて。



…でも分からない。



もう分からないんだ。




「私、は…っ―――」



≪ガクンッ…≫

それは互いの刃をぶつけ合う最中、全力の一撃が交差した時だった。向け合っていた背は先に青琉が崩れて、体が傾く。
しかしそれを、すぐに引き返した政宗が抱き止めた。



「筆頭!?」

「大丈夫だ」



駆け寄ってくる兵士にそう返す。

コイツは、



(とっくの昔に限界がきてた―――)



雨が降り続く。気を失った青琉の頬を濡らして、雫は涙のように流れ落ちる。
―――戦いは幕を閉じた。

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