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分からない。どうすればいいか分からない。
家族を失った日からずっと、ずっと。己が信じるまま生きてきた。
“強くならなければならない”。
もう何も失わない為には。
『……』
その為には何だってやってきた。
情けを捨てて敵の家を皆殺しにする事だって、焼き討ちにする事だって。
自分を照らす赤い炎からは熱さなど感じず、木片を焼く音が空しく戦場を飾り立てる日々。
でも火に照らされる中、眠るように死んでいる子供を見て。
この子の生を私が奪ったんだと。
家族を私が奪ったんだと。
―――同じ光景で気付けば私は殺す側にいたことを知って。
何が正解で何が間違いなのか。
分からないまま悔やんで、人知れず涙した。
でもそんなこと、何になる?
―――いつしか涙は出なくなった。
『…』
…頬に、体に。何度も何度も、何事もなかったように血が飛んできた。
そして織田に戻る。
嘘の己で全て覆って。
―――これでいいんだと言い聞かせて。
…でも分からない。
もう分からないんだ。
「私、は…っ―――」
≪ガクンッ…≫
それは互いの刃をぶつけ合う最中、全力の一撃が交差した時だった。向け合っていた背は先に青琉が崩れて、体が傾く。
しかしそれを、すぐに引き返した政宗が抱き止めた。
「筆頭!?」
「大丈夫だ」
駆け寄ってくる兵士にそう返す。
コイツは、
(とっくの昔に限界がきてた―――)
雨が降り続く。気を失った青琉の頬を濡らして、雫は涙のように流れ落ちる。
―――戦いは幕を閉じた。
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