あれから8刻。
酒屋は半壊、ただ昔付き合いの店ゆえに領主側の行動には慣れっこのようで。
謝ってから、「“長曾我部元親”がもっと広くて頑丈な店を用意するので安心して下さいな」と怖いくらい冷静に、着物がわかめだらけの沙羅が言ったがすんなりと承諾が出た。
「お、おま沙羅…勝手に…!」と地面に這いつくばった元親がいたのを彼女は全無視である。
砦に戻り、直ぐ湯浴みを済ませた沙羅を迎えたのは元親だった。





「ちょいと、…いいか?」





―――





あの騒ぎがつい先程の出来事なんて信じられない位、穏やかで。
虫の声が、夜風が耳や肌をくすぐる。





「さっきは、そのよお…悪かった」





隣で元親が呟く。
ちらり、見ると決まり悪そうに脇見する彼がいた。





「…気にしてないわ」





わざと呆れたように言えば





「ンな怒んなって!
ひと月ぶりで嬉しくてよ、しかもお前と初めて飲めるとなりゃ
居てもたってもいられなくてだな、」





一生懸命弁解しようとする彼に思わず笑みが溢れる。
全くこの人はこういうところは本当包み隠してくれなくて。
子供のように無邪気だから








「…なら元親、
今度は私の頼み、聞いてくれる?」









私もつい、喋りたくなる。








「あ、何だぁ?」








―――チャプン…








「私の酌、受けてくれる?」








用意していた徳利と盃を持って頬を緩めた。
すると元親は丸くしていた目を細めて笑う。







「断る理由がねぇじゃねぇか」






―――




トクトク…

月が明るい。
盃の水面が輝きを映す。





「…うめえ」





ふっと目を細めた沙羅。
元親が差し出した盃に再び継ぐ。





「こうして飲むのが、お前とは一番合うのかもな」

「そうかもね」




盃は直ぐ空になる。








「沙羅」

「何?」







トクトク…

―――徳利もあっという間に空になって。







「俺も一つ、頼んでもいいか?」

「ん?」






ふっと隣を見遣った瞬間だった。
唇を奪われて。
驚いた私は思わず飲んでいた。
彼から移される酒を。
大きな手が私の頭を支え、角度を変える。

―――からん、と持っていた徳利が床を転がって。
唇が離れ床に寝かされ、その上に元親が覆い被さる。
ほんのり赤くなった彼が言うのだ。







「酔ったお前が見てぇ」







言う貴方も酔ってるくせに
―――そう思いながらも
ふわふわとしてくるから







「馬鹿…」







酒に酔ってるのか、貴方に酔ってるのか分からない
きっとどっちもなんだと思いながら
その首に腕を回し、唇を重ねた。



宵月の浅酌

(貴方には敵わない)

end.

(補足→実は夢主は能力少し健在)
…自分でも恥ずかしいくらいに甘いので土に潜りたいです()

20130808

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