「―――…それじゃあ」




ッ…





「いいか野郎共!
宴の始まりだあー!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 




元親が掲げた盃と共に始まった宴。
苦笑した。
始まってしまえば、悪いものでもないかと思ったが、此処までの道程を思い返すとたちまち頭を抱えてしまう。

今日だけと、渋々折れた訳だがてっきり揃って向かうと思っていた私の想像虚しく、『遅れんなよオメェら!』と一声残し、仲間より先に城下に入る事となった。
…私を抱えたまま碇槍を走らせて、だ。
視界が反転どころの話じゃない。
意味不明なまま叫んでやっと離してくれたと思ったのも束の間、『こっちだ』と手を握られて。
そんな急がなくてもいいでしょ…!と手を解こうとした。
なにせ町中、人目を憚りたくて。





『元親様と沙羅様だー!』






思った瞬間だ、陽気な声に見付かったのだ。






(小さい子はホント…素直というか何というか…)






7、8つ位の女の子2人と、男の子2人。
『手、つないでるー!』まではまだ良かった。
『ねぇねぇ』と大きな目をきらきらさせて私に迫る女の子が言った言葉は





『元親様と…毎日ちゅーするの?』






私は、笑ったまま固まった。
彼はというと大笑いだ。
そしてはぐらかすどころか『毎日はちと厳しいからよお…、一緒に居れる時はこうしてしっかり好いてやるんだ』
と言い私の髪の毛に口付けるから恥ずかしくてしょうがない。
女の子達がきゃーきゃー言って真っ赤になってるのと同じ位、私も真っ赤だろうに彼は何食わぬ顔してふっと笑うから



『―――っいて!
何しやがる!』




せいぜい頭を叩いて恥ずかしさを紛らわす事しか出来なかった




「―――…沙羅!」

「!」

  


気付けば元親に顔を覗き込まれていて。 
驚いて彼を見ると




「なーにボーッとしてやが…る!」

「―――った!」




おでこをつん、と弾かれて。
元親!、と叫んだ私の手が掴まえる前に
はっは!、と笑って逃げられてしまった。





「この…!!
待ちなさーーーーい!!」

「ははは、姐さんまたアニキにしてやられてらぁ」

「アニキも懲りねぇなぁ」



追いかけっこを始める二人を横目に子分達は酒を啜る。
今ではこんな事しょっちゅうだ。



(その位アニキが姐さん好きなんだから、しょうがねぇよ
…姐さんあんな反応するしなぁ)

((確かに…))




がっと笑いが起きた。
元々ツンデレなのは知っていたが。
それがいじられる要因だと彼女は気付いているのだろうか。
見ている分には楽しいのだが、聞こえたら聞こえたで自分等の酒は終了だ。
平和にそれでいて楽しむのが一番と、盃を空にする。



「姐御ー!
酒、頼んます!!」

「はいはいちょっと待―――


きゃあ!!」




どんがらがっしゃーん!と、盆やら器やらがひっくり返って。
その場にいる全員が硬直した。







「―――フ、」






垂れる冷や汗






「フフフ…」





酒やつまみ、汁物のわかめの中から立ち上がった彼女の顔が見えない。
ヤバイ、と苦笑した元親が後ずさった。



「いい加減にしなさいよ、あんた達」

オメェら逃げろおおおおおおお!!」

「大人しく座ってなさーーーーーーーい!!」





襖をばん、と開け外に出た元親の努力叶わず突風が皆を吹き上げて。
「な、何で俺達までええええええ!!!」と子分達が叫んだのだった。


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