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容易かった
この7年、感傷に浸る暇も無く
安芸の為にだけ生きてきたのも同然だったから
「う、うわあぁぁぁぁ!!」
カツッ…
「はぁっ…はぁ…!!」
ドッ、と木に背中を貼り付け震え上がる男。
行き止まり。
静かな、鋭い足音が
止まった。
「か、家族が村で待っているのです…
殺さないで下さい!!
お許しをッ!!」
―――ザンッ!!
「え…」
一瞬だった。
泣きながら平伏し謝る男を待っていたのは
赤い残滓。
同時にそれは得物を持っていた方の服に、顔に飛び散る。
月明かりに光る丸い刀、輪刀を持っていた方に。
地に崩れ動かなくなった男を見下ろしながら、
切れ長の目が告げた。
「我が隊列を乱す者に、」
家族等、無い
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