2
翌日、興元は死んだ。
急死だった。
同じ、酒毒で。
涙は出なかった。
だが後悔は消えなかった。
―――
当主はまだ幼い興元の息子幸松丸に決まった。
我は後見人として幸松丸の傍に就いた。
だが弱体した毛利を放っておいてくれるものはいなかった。
武田軍が進撃してきたのだ。
元就は幸松丸の代わりに出陣し、これが初陣となった。
持ち前の頭の回転と、冷静な策略で勝利を治める。
戦は度々起き、元就は智略によりその戦功と名を他国に知らしめる事となった。
その間7年、悲しむ暇もなかった。
そして幸松丸も10に満たずして亡くなった。
病死。
彼はこの政の中で生きていくには幼すぎた。
「元就様?」
布団に横たわる幸松丸の亡骸に背を向け立ち上がる。
部下を無視し、部屋を出た。
『私は何処にも行かぬよ、松寿丸』
『まこと、に?』
『あぁ、』
カツッ…カツッ…
『もっと素直たれ』
『す、すなお…』
『そうだ。そなたは素直さが足りぬ。
好きならば好き、嫌いならば嫌いとはっきり示すのも大切であるぞ』
感情
この心の揺さぶりが
人を堕落させる
守るべきものを
『…あうー、うー』
壊す
故に
我は
駒となる
(感情を捨て)
(国を守る為だけの)
(兵となる)
end.
20130118
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