翌日、興元は死んだ。
急死だった。
同じ、酒毒で。

涙は出なかった。

だが後悔は消えなかった。





―――




当主はまだ幼い興元の息子幸松丸に決まった。
我は後見人として幸松丸の傍に就いた。
だが弱体した毛利を放っておいてくれるものはいなかった。
武田軍が進撃してきたのだ。
元就は幸松丸の代わりに出陣し、これが初陣となった。
持ち前の頭の回転と、冷静な策略で勝利を治める。
戦は度々起き、元就は智略によりその戦功と名を他国に知らしめる事となった。
その間7年、悲しむ暇もなかった。

そして幸松丸も10に満たずして亡くなった。
病死。
彼はこの政の中で生きていくには幼すぎた。




「元就様?」




布団に横たわる幸松丸の亡骸に背を向け立ち上がる。
部下を無視し、部屋を出た。






『私は何処にも行かぬよ、松寿丸』





『まこと、に?』





『あぁ、』







ッ…ッ…






『もっと素直たれ』

『す、すなお…』

『そうだ。そなたは素直さが足りぬ。
好きならば好き、嫌いならば嫌いとはっきり示すのも大切であるぞ』







感情






この心の揺さぶりが







人を堕落させる







守るべきものを







『…あうー、うー』







壊す








故に






我は





駒となる
(感情を捨て)
(国を守る為だけの)
(兵となる)

end.

20130118

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