スー、
―――襖を閉じて。
部屋の奥、布団の横に神流が屈み込む。
後ろに立つと、見えたのは赤ん坊。



「う…ううぅ」



途端大きくなる泣き声。
はっとして思わず後ずさりかけた時





「松寿丸様」






呼ばれて






「大丈夫ですよ」





此方に…
―――そう言って招かれて。
迷ったが隣に座る。
神流はよーしよしと言って、赤子をあやしていた。
腕の中、小さな赤子を。



「こーれ、もう泣かないの。
―――申し訳ありませぬ。この子はいつも泣いて泣いて。
なかなか寝てくれないのです」

「われはさして…気にしておらぬ」




それよりも興味津々だった
赤子など、はじめて見たのだから





かように小さいのだと




―――ふいに、目が合う。





「…あうー、うー」




ぴたり、泣き止んで。
手を伸ばし、見つめられて。




「あら、」




目を細め、頬を緩める神流。





「松寿丸様」






赤子を抱えた腕を、こちらに差し出して。
目を丸くした。







「!」

「この子を、」






抱いてみて下さいませんか―――?





―――





両腕に抱えた赤子は「きゃっきゃきゃっきゃ」とすごく嬉しそうな声で笑っていて。





(小さい…が、思ったより重いのだな)





下手に動くと落としそうで。
身動き出来なかった。




「珍しい…この子がこんな簡単に泣き止むなんて」

「…?」

「私でもなかなか泣き止んでくれないのですよ」





苦笑して、松寿丸の腕の中、目を向ける。






「泣いてばかりで心配だったのです」



「うー、うー、あうー」



ピト、
―――ふと触れた。
ずっと伸ばしていた手が、頬に。
松寿丸は驚いて目を大きくする。
それがとても嬉しかったのか、また頬を桃色に染めてきゃっきゃと笑う赤子。




「うー、ぅー…」




だが安心したのか、突然眠そうに目を細めて。
そのままスースーと、寝てしまった。




「……………」

「あら、寝てしまいましたね」

「われは、どうすれば…」




いよいよ困り果てる松寿丸に神流が笑って。
こちらに…と、腕を差し出し松寿丸が渡す。
抱えると赤子を見つめ笑う。




「余程お気に入りなのですね、松寿丸様の腕が」

「!」

「また、来てくれませぬか」







この子もきっと、喜びます






「…………」






目を細めて







「名は…」







その






「赤子の」







名は






何と申す

―――その言葉に







ッ…








神流が微笑んで








「―――由叉と、」







由叉と申します







「由叉」







ピト、






―――フッ…







「由叉か」






おもい出す



小さな手
(ふれた)
(そなたをはじめて)
(しったしゅんかん)

end.

お父上生きてる時の松寿丸の口調難しい…そして父上も…赤ちゃんの泣き声も← でももう少し幼少続きます(楽しい←)

20121123

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