トタトタ…
―――剣術、馬術…全ての稽古が終わった頃には外は薄暗くなっている、いつもの事だ。
今日も既に日が沈みかけていて。
夕日を横目に松寿丸は目を細めた。



(また)





夕日が






(しずんでゆく)







『ははうえ!ははうえ!!…』







その度思い出してしまう。
母上がしんだのもこんな






「……」






夕日がしずむ時―――。



くらやみにおおわれる夜がこわかった。
あの日からわれは父上を、父上のすきな安芸を守りたいと思った。
そのためには、われがせん力に






『そしていつか、私の跡を継げる位
大きくなれ』







(家を守れるくらいつよく







早くつよくならなければならぬ)




でも





(夜は、すかん…)





今でもおちつかなくなるから





(ひかりを)





あたたかいひかりを見たい




「………」




かと言って他に言うのも躊躇われた。
今までそんな事言わずに来たのだ。
今更、不安だと幼稚な事を言っていてはいけない。




「……」




いそがしい父上に、わがままは言えない





(へやにもどろう)




歩きだした、瞬間





「松寿丸様ではございませぬか?」





家に仕える六条家当主の妻、神流と遭遇する。





「どうなされたのです?斯様な遅くに外にいては、御風邪をめされます」

「だいじない」

「誠に…?御顔が優れないように見受けられますが…」

「かんなはなにゆえここに?」




気まずくて話をそらす。




「私ですか?私は…」




す、と爪先が直ぐ傍の襖へ向く。




「娘がちゃんと寝ているか、見に来たのですよ」

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