悔しかった。
腹が立った。

―――惨めだった。

否、この感情が




計算外だったから―――。





―――






「―――…目が覚めたのね」




顔を覗き込まれていた。
見えた顔が重なって。




「!」

「…大丈夫?」

「―――触るでない…!」



俯いたのに反応して伸びてきた手。
払い除け、壁に手を置き立ち上がろうとした。



(血を出しすぎたか



視界がぼやける―――)




「何してるの!?早く座ってこれを飲「煩い黙れ」




我に構うな




「!「飲みなさいと言っているでしょう!!」

『ほら!』

「!」




刹那グイッ、と腕を引っ張られて。
半ば転ぶように床に座らされる。




「貴様…!!」

「さぁ、早く」



よく効くわ、そう言って差し出された小袋。
黙視した。




『ほら、食べて!』




拒めないのは、
甘さに浸りすぎた故か。

―――受け取ると飲み干した。




―――




「…何故我を助ける」




由叉の姉。
そして六条の姫。我が家に仕えていた一族。名残惜しい訳ではない。
この女が何故手を貸すのか、理解出来ぬだけ。



「私の妹が悲しむの。
…貴方の事、本当に大切に想っているのだから」

「…妹…だと」




『元就』




眉を寄せた。
この女が喋れば喋る程、




「……」




散らついて重なって




『弱いからさ』





「……」





「『―――――元…』」

「…――元親なら、」

『元親君と同じだ』




「きっとやってくれる……」





―――




ツ…

―――足が止まった。
上からは激しい音が聞こえる。




だが、知らぬ




(勝手に潰しあえばよい)




我は




「ぅ…」






甘さに





馴染み過ぎた






―――スッ…





『そういうとこ、好きだよ』





久方ぶりの感覚に




懐かしさを覚えていた




『元就―――…』





危うく忘れかけていた





「……」





我が守るは





「……」





安芸の安寧





この女は駒





それ以上にはならぬ



盤上の手駒
(記憶、温もり)
(ぬるい感情等まやかし)
(思い出した)
(馴れ合いは身を滅ぼすだけだと)

end.

元就の感情が一気に方向転換です。
この最後の場面の後、夢主抱えた元親とばったり会う…という感じです。今まで妹の自然体に触れて元就自身心を開きつつあった反面、それは許されないという矛盾と戦ってきたんですが半兵衛の言葉で我に返ります。「元親と同じ」ってのは元就にとって何よりも屈辱だったらいいなぁという←
まぁ、まだまだ揺れます。気長にお待ち下さいっ。

20120506
20120909改

[ 27/55 ]

[*prev] [next#]

[戻]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -