何故我に近づく




笑いかける





貴様の益す事等何がある






(理解出来ぬ―――)






―――





「…―――おや、まさか本当に」





その謀らぬ笑みが我に





「来るなんてね、元就君」





こうさせるのか―――。





「面白いね、君でも本気で人を好く事があるなんて」

「…何?」





人を好く…だと





「だってそうだろう?兵を切り捨てる事で有名な君ともあろう者が、その兵を助けに来るなんて。
ふふっ、智将でも好いた子には頭が上がらないのかな?」




違う




「ふん、冷酷と言えど所詮“半端者”か、
その体たらく、それでは国も治まるまい」





違う




「黙れ…」




ダ!…

―――動いていた。
声と裏腹に自分の中に怒りが溢れて。何故腹立たしいのか。分かるから余計許せなくて。気付けば向かっていた―――。






―――






「―――…ぐ、」




こうなるのも





「無様だね、元就君」





知っていたから





「何故こうなったか、もう気付いてるだろう?」





我は





「弱いからさ」





君なんて





「私情を捨てきれてない君なんて、」





敵じゃない。





「簡単に引っ掛かるなんて、」





元親君と同じだ





「!?アンタは……――」





同時に聞こえたのは





「どういう事だ…」





紛れも無く





「毛利元就……!?」





奴の声で




「長…曾我部…元…親……」





―――拳を握り締めた。

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