2
何故我に近づく
笑いかける
貴様の益す事等何がある
(理解出来ぬ―――)
―――
「…―――おや、まさか本当に」
その謀らぬ笑みが我に
「来るなんてね、元就君」
こうさせるのか―――。
「面白いね、君でも本気で人を好く事があるなんて」
「…何?」
人を好く…だと
「だってそうだろう?兵を切り捨てる事で有名な君ともあろう者が、その兵を助けに来るなんて。
ふふっ、智将でも好いた子には頭が上がらないのかな?」
違う
「ふん、冷酷と言えど所詮“半端者”か、
その体たらく、それでは国も治まるまい」
違う
「黙れ…」
ダンッ!…
―――動いていた。
声と裏腹に自分の中に怒りが溢れて。何故腹立たしいのか。分かるから余計許せなくて。気付けば向かっていた―――。
―――
「―――…ぐ、」
こうなるのも
「無様だね、元就君」
知っていたから
「何故こうなったか、もう気付いてるだろう?」
我は
「弱いからさ」
君なんて
「私情を捨てきれてない君なんて、」
敵じゃない。
「簡単に引っ掛かるなんて、」
元親君と同じだ
「!?アンタは……――」
同時に聞こえたのは
「どういう事だ…」
紛れも無く
「毛利元就……!?」
奴の声で
「長…曾我部…元…親……」
―――拳を握り締めた。
[ 26/55 ][*prev] [next#]
[戻]