「―――…元就様!!」



突然の騒ぎにピタ、と筆を持つ手が止まった。
書斎、自分の机から目を離し襖を見遣ると影が一つ。



「またあの女が甘味等と戯れ事を言い、向かっておるならば早々に退かせ」



何を考えてかあの日から頻繁に部屋に来る。
さらには無断で入り来ては「団子だよほらほらー!少しは休む!」等と喚きたて、とてもでないが耐えられん。



「我は忙しい。
今後この部屋に近づきし時は切り捨てるときつく叱りつけておけ」

「も、元就様。実は…」

「貴様、まだ何か――」



キッ、と冷たい視線を投げる元就に部下が言った。



「由叉殿が―――…」







―――






『六条由叉は豊臣が貰い受ける』




書状にはそう書いてあった。
紙の端には竹中半兵衛と、残して。

駒共は動揺し慌てふためいた。
由叉が、懐刀が豊臣に落ちた事に。
そして六条という名に。

我が毛利家に代々仕えていた、今は亡き者とされていた六条の名が
あの女についていた事に。
六条は死んだとされていたのだから。




(竹中…)




…謀りおったな。

―――眉を寄せて。
豊臣が六条の情報を持っていたのに些か驚いたが、さほど狂いはない。



狂いは、ない



―――ピ





「……」






何故






『ありがとう』





元就―――







足が止まる





『これからもっと頑張るから』





元就の為に





ッ―――…





『見ててね』







知らぬ





「…―――」







こんな感情は―――…。

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