「―――…もーとーなーりー!!」




ドダダダッ、と忙しなく近づいてくる足音に、嫌な予感はした。



―――バンッ!!

「…っ、貴様静かに「元就ィ!!」



がばっ、と口を塞ぐように抱き着いてきた由叉の勢いに耐え切れず畳に倒れ込む。



「ぐ…貴様」

「聞いたよ!元就がおれを助けてくれたんだって!?」



元就の両肩を掴み顔を離して。
目をキラキラさせる。途端ズキッ、とする脇腹。目を丸くした瞬間、



「うわあぁぁぁぁぁ傷があぁぁ元就いぃぃ!!」

「少しは黙らぬか貴様…っ―――」





―――




「して」

「ん?」




元就の眉が顰まる。




「何故我の部屋に居る」

「え」




まだ動ける状態でもないのに騒ぎたてた所為か、傷口が開いたらしい。
そもそも何故袴にサラシに羽織だけなのか、理解に苦しんだ。




「だって、」



包帯を自分で器用に巻きながら、元就を見つめて。



「元就がおれを抱き上げてくれたんで「どの駒から聞いた」

「隆家」




満面の笑みで言い切った由叉。元就の顔に黒い影が降りた。




(宍戸…)




後に切り捨てる―――…




「―――…へくしっ、」




(んん、風邪か?)




洗濯物を干しながら快晴を見上げた隆家は、知るはずも無く。




―――




「―――何で怒ってるのさ」




由叉は不貞腐れていた。




「何用で此処に居ると聞いておる」

「何用っておれ元就の懐刀だから、近くにいなきゃ」

「去れ」

「何だよ!懐刀って言ったじゃ「策を練る邪魔だというのが分からぬの「あっ思い出した!!」




突然部屋を出ていく彼女。



(この女…っ、)




楽しそうに戻ってくると、甘味と湯呑らしきものを乗せた盆を差し出してきて。



「…何の真似だ」

「助けてくれたお礼!」




にこにこ笑って。




「こう見えておれ、団子作るのとかんー…上手い筈なんだから!
ほら、食べて!」




(上手いのではなく上手い筈…)

―――言いたい事は沢山あるが、関わるだけ疲れる。

…まぁ見栄えはいい。
匂いもいい。




「……」




だが何故この女のものを食さねばならぬ。

―――ぷいっと背を向け再び書をしたため始めた。

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