ァ…

―――また吹き抜けた風。
元就と由叉の髪を揺らした。



ザッ…

―――元就が由叉の目の前で止まる。ただ無言で彼女を見下ろししゃがんで、




「!!…」




目を丸くして見つめていた。
想像も出来る訳がない。



―――何故なら彼女を腕に抱き抱えたのだから。





「…何をしておる。貴様が持て」



床に刺さった輪刀。
それを目で指し踵を返す。



「…ははっ!」



我に返った隆家が輪刀を取って。
だが、持ち慣れない物と少し違う元就の様子に困惑したままだった。

元就は何時ものように歩き出す。




「…」




木々の間から僅かに差し込む月光を受け、ゆっくり目を向けた。
月光が彼女の顔を照らして。
長い睫毛が影を落とす。



―――直ぐに、この赤は返り血だけじゃないと分かった。
腕の中に居る由叉は傷を負ったとは思えない程、穏やかな表情で。小さく寝息をたてていたが。
元就の瞳がすっ、と細まって





「―――馬鹿な奴よ、」




捨て駒らしく散る事なく




礎の一つにもならず




(何故真摯に命を為さんとした)




今までの駒共と違う感覚だった。
それが理解出来なくて。




(何故)



そんな顔で眠って居られる?

―――安心したように寝息を立てる様が無防備で、理解出来なくて。




(斯様な事をして貴様は何に



満足しておる…――)




「――…理解出来ぬわ」



それはね、きっと




この力の所為で特別視されてきたおれを忌む事なく



一人の“人”として見てくれる




数少ない人だから。





―――元就はとりわけそんな事考えてないかもしれない。



―――勝てればいい、おれはそれだけの価値かもしれない。




でも、




『その腕…我に買われた事、誉と思え』




否定じゃなくそういう考え方を教えてくれた




おれを認めてくれた





そんな君の傍で
“人”として生きたいと




君を守りたいと思った
(この力に尊敬と畏怖は付き物だった)
(でも君は)
(おれと普通に接してくれた)

end.

計算外の想いの続きです。
本編2部に入る前の話なので、隆家君フライングでした← 本編より先に出るなんて、私すら予想外だったよ← くそ、隆家…← でも彼も結構すきです。

20101031
20120908改

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