3
「―――ガハッ!!はッ…はッ…、」
バシャァッ、と跳ぶ水飛沫。
肺を満たす新鮮な空気。
「沙羅!…おい沙羅ッ!!」
腕に抱えた彼女。
その瞳は伏せられたまま、息している様子もなくて。
「富嶽は…っ、」
気付けば嵐は止んでいた。
少し離れた所にあった要塞。それを見つける。
刹那水を掻いて、必死に掻いて。甲板へ続く梯子を握った。船体に組み込まれたレバーに手を伸ばす。外の鉄の蓋を開け引き下げて。
すると梯子は上昇し始めた。
―――
「―――…おい、沙羅しっかりしろ…
沙羅ッ!!」
甲板でもう一度抱き起こす。
冷えた体、濡れた髪。顔に張り付いたそれを払い彼女の胸に耳を当てた。
(生きてる)
とくん
、
とくん
、
打つ心の臓。
でも弱々しくて、今にも消えそうで。
(どうすりゃ……っ、どうすりゃいい……)
「―――――!!」
ハッ、として。
顔を上げると再び彼女を見つめた。
沙羅
(許せよ―――)
サァ―――…
―――一陣の風。
吹いてだが、静かに止んでいく。いつの間にか、雲間から白い光が幾つも差し込んでいた。
その下で、
唇に触れた、鬼の唇。
唇を塞ぐ、優しい口付け。
自分の命を注ぎ込むように、分き与えるように
送り込む、命の息吹。
白く細長い指に、己の指を絡め強く握った。
死ぬな
もっとお前の
笑顔を見てぇんだよ―――
誓う、この口付けに
(お前は俺が守ってやる)
(だから)
(生きろ、沙羅)
end.
人工呼吸と見せかけての…だったらとても美味しいなぁと。
でも何よりびしょ濡れの元親が美味しかったと書いてから気づきました←
20100731
20120908改
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