パッ…



「………」



さっきより顔色がいい。
余程寝てなかったのだろう。

―――布団に横たわる半兵衛に沙羅は毛布を掛けた。
机の脇に寄せてあった粥はまだ温かかったから蓋をして、盆ごと傍に置く。




『…君は…優しいね、沙羅…』





何故助けたのか。
放っておけば、自分は逃げられたかもしれないのに。




「優しくなんかないわ―――…」




でも意地だった。
今此処で死なれるのが嫌だったのだ。




「病で死ぬなんて許さないから―――」





それだけ。
きっと。

―――沙羅は立ち上がると部屋を跡にした。




―――









「―――…ぅ…」



暖かい



(眩しい)




これは陽の―――…

視界がはっきりしてきて。
見えたのは茶色い天井。



「――――!!」



ガバッ、と起き上がって辺りを見回した。
すると手の届く位置に食膳が、しかもご丁寧に粥には蓋までされてあって。



「………っ、」



眩しい光の原因は、開け放たれた障子から差し込む太陽だと分かる。



(おかしいね…閉じていた筈なのに)






『―――』







「……」




ふと脳裏に過った。





(君……、か)




全く余計な事をしてくれる




僕は敵だというのに








「だから君は…、」




優しすぎる

―――思ったその時、



ァ…

―――外から吹き込んできた風。
共に運ばれてきた



黄色い花びら
(その優しさに付け込んで利用する僕を)
(君は許してくれるだろうか)

end.

前々からやりたかった…。個人的に半兵衛とヒロインの絡みがまた好きなんです。

20120907改

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