「―――同情かい?」

「ぇ…」




それは今まで聞いた事がない位、低い声。




「それとも、病を持っていると知って僕を蔑むかい」




自嘲するように喋り続ける半兵衛。
身動き出来なかった。




「豊臣の軍師は体が弱いっって「そんな事じゃないッ!!」




目を細める彼。
はっ、とした。




「―――程々にしたら?…って言ってるの」

「…はは、何だいそれは?負けを認めてやっと豊臣に降伏するつもりになったの?」

「自分で自分の首を絞める貴方と戦って勝っても嬉しくない。
…それだけよ」



半兵衛が眉を顰める。



「へぇ…こんな状況で君はまだ西海の鬼を信じてるんだね」




でも

―――ぐっ、と強まる力。



「く………っ」

「今の君の立場、理解してる?
僕の心配より自分の心配をすべきだと思うけどね」

「……別に自分の心配ぐらい、してない私じゃないわ…っ、」

「……」




相変わらず気が強い。

―――この時の僕は、込み上げてくる血を我慢しながら、収まらない呼吸の中にいた。
そのせいか、気が動転していたんだ。きっと。




「半、…兵……衛?
……ッ!!」



手の力が強くなると、苦しそうに眉を顰めた彼女。



(駄目だ…意識が朦朧としている)




何故




(今日は随分と…、苦しい)




―――近づく半兵衛の唇。沙羅の耳元に近づいて。

びくつく彼女。




何故君は




「…君は……優しいね……沙羅」




優しいの―――?…

―――瞬間腕を掴んだ力がスッ、と抜けて。
ふらっ、と傾く体。



「――…!半兵――」



言いかけて自分より背が高い彼を支えていた。



(何て…軽いの)



ろくに食事も取ってないと女中が言っていたのを聞いていた。が、ここまで酷かったとは思わなくて。



いけないのに、



(…すまない。
君の肩…借りるよ…―――)




朦朧とする意識。
半兵衛は目を閉じた。


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