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あれから何度か刀を交じえた。相変わらず何を思っているか刀の重みからは分からねぇ。
…が、吊り橋での事だ。




『…!!』




オレが誘い込んだと言えば途端に顔を歪めて敵意を曝け出した。表面的じゃねえ、感情のある敵意をだ。それが予想以上に人間臭くて、今までとは似ても似つかなくて。―――but、いや、…だからこそ余計にあの枯茶が生き生きと強くみえて。妙に惹かれた。
小十郎を含めた皆をあの場から離したのはサシでアンタと話したい、正直それだけだった。




『何のつもりだ。一国の将が部下一人付けずに戦いに臨む等』




真面目で




『黙れ』




気が強え。それが口だけならそれ以上の興味も沸かなかったかもしれねぇが、そうじゃねえ。この六爪相手に正面から挑んでくるのも、そのしなやかな剣技も、あの屈しない目も、刀を交じえれば交えるほど気に入って。戦いの最中だとも忘れ、また見てえと思った時には一緒に来いと手を出していた。




『―――なめるな』




それをまさか手を引っ掴んで崖に道連れって大胆さには流石のオレも驚いたが、そこがまた気に入っちまった。




『―――……ッ…』




だが谷底で、水の流れる音で薄ら目を覚まし見えた―――アイツに気付かれずに見えた一瞬の表情。刀をオレの首元で止めたまま、目を伏せて歯を噛み締める顔。



―――アイツの躊躇い苦しむ顔が忘れられなくなってた。




『…覚悟は出来ている。首を取れ』




オレの首を取りに来たくせに急に潔くなりやがる。




『貴様の都合など知らん』




かと思えば仏頂面もする。そんでついには、




『煩い黙れ!!私に指図するな!!』




また全てを跳ね除けようと目に見える強がりをする。
その一つ一つの表情が、頭にこびりついて離れなくなった。




『私は…ッ…敵に助けられる等、あってはならないんだ…』




強く見えていたprideが緩んだ瞬間。途端にアイツが脆く見えた。孤独の中で足掻いて、強がりでguardして、ホントは今にも崩れそうなアイツを知った。だから、

…何を背負って苦しんでるのか知りたい反面、アイツが闇雲に一人で届かねぇ場所に―――戻ってこれねぇ所に行ってしまうんじゃねぇかと。思った時には腕に抱えてた。




『…何故、私を助けた?』




一度涙を見ちまったからには




『私等、…置いていけばいいだろう―――』




言葉の意味も嘘に聞こえて。今でこそ正直になったあの瞳が




『お前、素直に考える事も覚えとけ。人の好意は黙って受けておくもんだぜ』

『敵の言葉に易々と乗るか。貴様こそ私を助けた事、後悔しても『ahー、okok』




バレバレな強がりが途端にコイツらしいと笑っちまった。
それでちらっと仄めかした言葉だったが、案の定。真面目なアイツはあくまで敵としての言葉を返してきたから、拉致があかねえなと思う反面。
それもまた嫌いじゃねぇと思って




『塗り薬だ。今より痛みは引くだろうよ』




そのreactionが見たいがために、アイツに渡してた。反論は言うまでもねえが、言いくるめちまったらこっちのもんで。あの時の、納得いかないくせに言い返す言葉がなくなった困り顔が―――素顔が忘れらんねぇ。
そんな顔も出来るんじゃねえかと。




「…」



―――悪くねえ時間だった。もう少し一緒に入れると思ったんだかな。

思わぬ形で自分に返されたのが予想外だった。テメェの敵だと言い張って突っ撥ねていたあのアイツがオレの手当をしたのもそうだが、引き換えにいなくなった。それがなんとも皮肉だと、



「…Ha―――」



―――一人、部屋の中で体を起こしたまま俯いてたオレは鼻で笑う。

分かっちゃいた、だが。



アンタの触れた脇腹が疼く。



「…」



だから、



(教えろよ)



青琉

(where are you?)

(what do you think?)

(アンタが頭から離れねえ)



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