1
昼には伺えない風情を夜の支配者である月が顕にする宵闇
今宵の月は一層綺麗だった
昨日の奥州も平和な時が流れた
米俵を担いで城下へと足を弾ませる男達
自分で刈った稲を持って土だらけになりながらはしゃぐ子供
女達の色恋話
皆、幸せそうに笑顔をその顔に浮かべていて
それもこれも、このところ戦が滅法少ないお陰
そりゃあ戦がねぇのは、いいことだ
だが、面白くねぇ
真田幸村と一戦戦り合う事すら遠いこの時分
溜りに溜まった執務の山に
今まで目を瞑ってやがった小十郎がとうとうその口を開いたのは2日前
執務部屋で、鬼のような形相をした小十郎から逃げていた俺は、しつこい執念からとうとう捕まった
そして書類の山から少しずつ書状を引っ張り出し、睨み付ける
…そんな日々が続いていた
そんなhardな日常にも光はある
そう、今この襖を開けると………
さぁて…今宵もお邪魔させてもらうとするか
政宗は不敵な笑みを浮かべて襖に手を掛けると、静かにその手に力を入れた
[ 3/9 ][*prev] [next#]
[戻]