地平線からうっすらと光が見え僅かに辺りの暗闇を照らす
空と海が互いに照らし合って
まるで鏡のように反射する景色は見ていて飽きない
まだ肌寒い事だけが只一つ悔やまれるが



「寒いー」



背後でぼやいた欠は掌にハーハー、と息を吹きかけながら宙で足をぶらぶらさせる



「…っくしゅ」

「だから言ったろ!?まだ日の出てねぇこの時分は寒ーって」



風邪ひくから止めとけ、と言ったのも聞かず外に出てこのザマだ

元親は軽く溜め息をついた

互いに背を向けて大岩に座っているので欠の表情は見えない
だがまた口を尖らせて頬を膨らますあの表情が頭に浮かぶ

突然起こされた理由は日の出を拝みたいかららしい

しかも一緒にと来たら、断るんじゃ男が廃るってモンだろ?

俺も言われてこいつと一緒に拝みたくなったから浜辺まできたのはいい…が

欠が不満そうにぶー、とブーイングをする



「うるさーい
姫若子様はあんなに可愛らしかったのにー
チクビンが寒くなくて欠が寒いのはいやだー」

「む…昔の事はいいだろが
てかなんだよ!チクビンって」



丁度今その忌まわしい過去を回想してたってのに…

欠は俺がガキの頃からの顔見知り
7つも下のこいつは、昔屋敷に…俺にあてがわれた子供だった
話相手として…あの頃の俺が少しでも人と関わりを持つようにという、家臣達の策

こいつは…欠は俺をずっと近くで見てきた只一人の女だから



元親は肩を竦ませてうなだれた



昔の事を言われると言い返せない
見た目はガキでふわふわしてるが欠の言う事ならばなおさら

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