会いたい
「―――!!」
はっと我に返る。
(―――何考えて、るの)
寝ても覚めても考えて
苦しくて
愛しくて
―――私はただの預かり者なのに。甘えてなんて…いられない。
由叉と会えた。家族を見つけられたのだから彼に世話かける事はもうないのだ。
手を焼かせる事はもうないのだ。
なら
(もう…いいじゃない…)
『俺はあんたに惚れてんだ!!』
「…っ、…」
もう、いいじゃない…っ―――。
苦しかった。彼の気持ちに応えたい。でも望めば望む程私は彼を傷付ける。怖くて。この能力が、自分が。だから答えを出せない。彼の気持ちを繋ぎ止めてしまうだけ、なのに。
(でも)
逢いたい
(逢いたい…っ――…)
「…―さん、」
「……――」
「姉さん!!」
「っ!!」
気付けば由叉に見つめられていた。
「ごめんなさい…ぼぅっとしてたわ…」
全く…私という女はつくづく仕方がないわね―――
沙羅は眉尻を下げ笑う。
「――長曾我部元親、」
「え?」
突然発せられたその名前に思わず声が出た。胸が締め付けられて、心臓が早鐘を打つ。
「図星かー…」
由叉の目が優しく細まる。
「まだ言ってなかったよね、」
俺があの後どうしてたか。連れ去られてどうなったか。
「えぇ…」
「決して悪い事だけじゃなかった…」
懐かしそうに目を細め、笑う由叉。それは滅多に見せる事のない表情。
「…聞いて、姉さん」
俺の幸せを―――。
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