「―――聞いてくれオメェら。無理にとは言わねぇ、だが俺は沙羅を助けてぇ」



一緒に来てくれる奴はいねェか?

―――辺りがしゅんと静まり返る。



「アニキ…俺――」



言い掛けた子分の口はそれ以上の言葉を紡げなかった。そうだろう。
これは誰でも想像出来る負け戦。



「無理に言うな、俺はオメェらの意を汲んでやりてェんだ。
大切な子分共だからな」




賭けは嫌いじゃない。だがこれは―――戦力不足。もともと暫く天下にうって出る気もなかったし、天下よりも四国を守ることと大海原にくり出すことの方を取っていた。それは己が好きな海を自由に駆け巡りたいのもあった。




だが今は少し、違う。




あいつ―――沙羅を船に上げてから海よりも陸にいることが増えた。それはあいつの肉親を見つける為。



そしてあいつは攫われた。




(俺はあいつを助ける為だけに)




部下を巻き込み負け戦をしようとしている―――




でもどうしても諦められなくて





「―――アニキ、」




元親が目を丸くする。




「俺…ついていきますぜ!」



俺も、俺だって…と、次々と上がる声。



「おめぇら…」




本当にいいのか



全員ついて来てくれんのか






野郎共……ッ…!






(こんなに鼻の奥が痛ぇのは初めてだぜ)



「俺は本当にいい子分を持った。恩に着るぜ、野郎共」



元親は胡坐をかいたまま頭を下げた。




「アニキ!?止、止めて下せぇっ!!」
「そ、そうです!!俺達、皆アニキに何処までも付いてくって決めてんだ!」




そうだ、そうだと彼方此方から聞こえた。
その顔にもう恐怖はない。



「沙羅は俺達にとっても大切な仲間ですぜ!!」

「仲間が連れてかれちまったのを黙って見てられねぇっ!!」

「アニキ!!らしくねぇっすよ!!」

「アニキはいつも通り俺達のアニキでいて下せぇ!!」


「アニキイィィィィイ!!」

「オメェら…っ、」



改めて染みる仲間の気持ち。



「ありがとよぉ……っ」



こんなにも自分は“宝”に恵まれている事も。




たとえ負け戦になろうとここで引いたら死にきれねぇ





いや、死ぬつもりなんざ




(―――ねぇ)





分かってんじゃねぇか、俺よぉ





「―――野郎共ッ!!
デカイ戦になる
気合入れろぉぉぉお!!」
「うぉぉぉぉぉぉおッ!!」





そうだ、此処で引くなんざ俺らしくもねぇ



西海の鬼はこんな事じゃくたばらねぇんだよ



待ってろ、沙羅



お前の笑顔





もう一度俺が取り戻してやる――――。



20100406
20120814改

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